2016/11/18
マイクとローリー:元米兵が私に教えてくれたこと
ありがたいご縁をいただき、平和を求める元米軍人の会(ベテランズ・フォー・ピース)のメンバー、マイク・ヘインズさんとローリー・ファニングさんをお招きし、元町映画館と関西学院大学、そして授業へのゲスト・スピーカーとして非公開ながら神戸大学にて、彼らが従軍したアフガニスタンとイラクでの戦争の現実を語っていただき、ふたつの大学あわせて300人以上の学生たちに、元兵士の声を直に聞いてもらえる機会を得ました。
今回の来日スピーキング・ツアーの全体のコーディネーターでもあり、通訳でもあるレイチェル・クラークさんに、兵庫でのコーディネーターを私に任せていただいたことに、深く感謝しています。
お三方が神戸に滞在した約二日間、私がエスコート役を務めましたので、じっくりとお話する時間が持てました。彼らの平和を求め行動する誠実さ、そしてその心根の優しさに、出会ったとたんに親友のような親しみを感じました。
ローリーとマイクによる戦争の現実についての話しは、下記にリンクいたします動画や新聞記事でもご覧いただけるので、こちらでは割愛させていただきますが、私が彼らと出会って、これまでの自分の認識が変わったことを、少し書かせてもらいたいと思います。
謝罪の力
今回の来日スピーキング・ツアーの初日の初回のトーク・イベントであった関西学院大学での講演で、マイクは開口一番に、広島・長崎の原爆投下、日本全国の都市を無差別に襲った空爆により、何の罪もない何十万人もの日本の人々が米軍により殺されたことを、ひとりのアメリカ国民として謝罪されました。そして、沖縄では今も米軍が人々の生活を抑圧していることを謝罪され、現在は彼自身も沖縄の人たちと一緒に、辺野古や高江の新米軍基地建設反対のために座り込むという非暴力の抵抗運動に参加していることを紹介されました。
こうして私の報告を活字で読まれていると、目の前にいる人の心からの謝罪がどれほどのインパクトを持っているのか、想像できないかもしれませんが、私は何か、心の中のわだかまりが溶けていくような感じを覚えました。
これまで原爆投下や空襲をした元米軍人たちの証言や記事などを多く読んだり、聞いたりしてきましたが、彼らの発言は、自分の行為の正当化、言い訳ばかりで、私自身も「軍人としての任務で多くの人を殺してしまったのだから、正当化しなければ彼らも正気ではいられないのかも」と思っていました。
もちろん、マイクはまだ40歳で、彼が日本を爆撃したわけではありません。しかし、従軍したイラクで戦争に何の正当性もないこと、自分がイラクで任務としてやってきたことが、人間としてどれほど罪深いことかを悟り、その後10年間精神的につらい日々を過ごしてきた彼が、自分が犯した罪ではないけれども、自分の祖国が犯した戦争犯罪について謝罪したいと思い、実際に日本の人々の前で謝罪するのを見たとき、私自身の中にもあった「言い訳」が消えていくのを感じました。
私の中にあった言い訳。それは大日本帝国時代の日本が、アジアで犯した多くの戦争犯罪にあまり関心を持とうとしなかったこと。まがりなりにも戦後70年以上、(アメリカがひっきりなしに世界中で戦争を続ける中)平和国家として、日本の軍隊が他国で人を殺すという事態を起こさなかったことに、私は誇りを感じていて、現在の戦争を止めさせることが何よりも大事と思い、戦前のことは後回しにしていました。それは、私が日本人として謝罪しないことの「言い訳」だったのではないかと、マイクの謝罪を聞きながら、これまでの自分を振り返っていました。
関西学院大学でのフォーラムにて |
ローリーは、こう語りました。「今回の米大統領選挙でトランプが選ばれたけれども、私はトランプともヒラリーとも、オバマともブッシュとも、はたまたジョージ・ワシントンとも、まったく自分との共通点を見いだせない。皆さんも、そうじゃないですか?日本の政界のトップの人間と自分とに共通点を見いだせますか?もっともっと多くの共通点を、私は皆さんの中に見つけられると思うし、皆さんもそうだと思います。共通点もない権力者に牛耳られるのではなく、国境など関係無くほんとうに共感できる人たちとつながれば、自分たちが望む世界を作っていけるのではと思います。」
「戦争や核兵器開発などではなく、科学技術はもっと人のためになることに・・・そう、再生可能エネルギーを推し進めて、天然資源の奪い合いが時代遅れのものになるように、清潔な水がどこでも飲めるように、気候変動を食い止めるように、何が人々の暮らしに大切かをよく考えて、科学技術を使っていきましょう。それを実行するには、ストライキやサボタージュも必要です。皆のためにならないことはストライキしてしまいましょう。私が一番望むのは、兵士たちがストライキして、『もう戦わないよ』という事です。」
私たちは、国境という目に見えないもので分断されていますが、ローリーの言うとおり、自分の国のトップよりも、ずっとずっと共感できる人は世界中にたくさんいます。私もいろいろな国の人たちと出会ってきましたが、ほとんどの人が、他人を傷つけてまでも自分が得をしたいとは思っていません。ただ、家族とともに平穏に生きていきたいだけなのです。それは、超大国アメリカでも、極貧のアフガニスタンでも同じです。ただ、一部の権力者が、利益のために人々の生活を破壊し、人々を紛争という泥沼に引きずり込んでいくのです。
マイクとローリーの言葉を聞いて、そして彼らの行動を間近に見て、私はこれからもっともっと心を開いて、ひとりの人間として、世界中の人と繫がっていけるのではないかと思い始めています。自分の国のトップが謝罪しないのなら、ひとりの日本人として謝罪する、そして国境の垣根を越えて、同じ思いの人たちと繫がって、行動していく。
世界中の人をひとりの人間として、そして自分自身もひとりの人間として、共に世界を作っていく。言葉にすると簡単なことですが、それをこれまでの私は十分に出来ていなかったことに気づいたこと・・・、そこから新しい世界が見えてきた・・・
そんなマイクとローリーとの出会いでした。
= トーク・イベント資料 =
元町映画館でのトーク会の様子はこちらをご覧ください。
■元町映画 イベント・リポート
http://www.motoei.com/event/event.html#1116
■動画
https://www.youtube.com/watch?v=rxoXlB4EfHw
ふたりのトーク内容を紹介する東京新聞の記事
■新任務「9条逸脱の恐れ」 米退役軍人が「駆け付け警護」に警鐘
東京新聞2016年11月18日
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201611/CK2016111802000130.html
元町映画館のトーク終了後 |
ツアー日程などの情報は、下記のリンクをご覧ください。
★11/15/2016アフガン・イラク米帰還兵スピーキング・ツアー in 西宮&神戸(「花と爆弾」応援企画)
http://whatsnew-on-flowersandbombs.blogspot.jp/2016/10/11152016-in.html