2021/03/28

 

10年前の春の歌

福島第一原発事故から10年が過ぎました。この3月に、何かブログに書き留めておきたいと思いましたが、10年前から何も変わっていない放射能汚染を考えると、オリンピックの聖火リレーに湧くように見える現在の日本の雰囲気とのギャップに、何も言葉が見つからない思いです。

10年前に書いた短歌が、私の感じるギャップを明らかにしてくれるでしょうか?


はまらないピースを押し込み木っ端微塵 ジグソーパズルのような原発


核の塵舞う春の野に花を摘むおさなのくれし小さきタンポポ


水瓶の水流し込め観世音崩壊熱に燃ゆるウランへ


ヒトの手に負えぬウランの燃える世を桜よいっそうあでやかに咲け


大地震後そばを離れぬ老猫も得体の知れぬ明日を憂うか


人間の理性も知性もかすむ春ツバメは確かに渡りて来たり


震災より四十九日の空の下すっくとのびる菖蒲一輪


一号機メルトダウンと聞く朝を天に向かいて薔薇開きたり


セシウムの薄く広がる青空に包み込まるるわが祖国なり


めぐりくる桜の季節よ汝こそは列島をゆく忘却の使者


2021年の春も
桜はあでやかに咲いています

短歌:小橋かおる

9首は『海市』2011年7月号所収。

最後の1首は、『海市』2014年7月号所収。


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