2021/04/21

 

~国産枯れ葉剤由来のダイオキシン汚染土壌問題から見る~放射性汚染土のゆくえ


4月10日にオンライン・イベント「~国産枯れ葉剤由来のダイオキシン汚染土壌問題から見る~放射性汚染土のゆくえ」を主催し、司会進行を務めました。国産枯れ葉剤の由来と行方を追ってこられた原田和明さんと、汚染土壌問題に詳しい井奥まさき高砂市議のご講演は、学ぶこと、今後も考えなければならないことが満載でした。イベントの講演部分の録画を公開しましたので、詳しくはリンクの動画をご覧いただければと思いますが、私なりにイベントで特に重要だと思った点を下記にまとめます。

動画リンク~国産枯れ葉剤由来のダイオキシン汚染土壌問題から見る~放射性汚染土のゆくえ https://www.youtube.com/watch?v=mY_JAU3dUJA 


「枯れ葉剤」ってご存じ?

ベトナム戦争で米軍が行った「枯れ葉作戦」、またそれに使用された枯れ葉剤の毒性については、60代以上の方ならよくご存じと思います。私も十代の頃、「枯れ葉剤」の影響で結合双生児として生まれた「ベトちゃん、ドクちゃん」の存在を通して、その恐ろしさを知りました。しかし、その枯れ葉剤が日本中の林野に撒かれ、ずさんに埋められていたとは・・・。


日本国内を日本政府が汚染する

ことの始まりはベトナム戦争まっただ中の1960年代(ちなみに私は1964年生まれです)。日本の企業が国内で枯れ葉剤の中間製品である245TCPを製造しており(回り回ってベトナム戦争で使われた模様)、その製造の副産物として粗塩素酸ソーダと粗PCPが発生。粗塩素酸ソーダは林野庁が山林に、PCPは農林省が田んぼに、それぞれ除草剤として散布し、これが日本の国土をダイオキシン類が汚染した最初と考えられるとのこと。


非常に驚いたのは、1970年。「枯れ葉剤」の毒性が国連で問題になり、その使用が違法となって、米軍は1970年4月に枯れ葉剤の主要成分である245Tの使用を中止。するとその大量に余った245Tを日本政府が後始末することになったようで、なんと1970年4月に「省力化」という名目で、日本国内の山林への「枯れ葉剤」245Tの散布が本格的に始まったのです!


しかし、なんと言っても国連で禁止されるほどの猛毒の枯れ葉剤、害がないわけがありません。同年の9月には下北半島のニホンザルの危機が報じられ、国会でも問題となり(大臣や官僚は、「245Tは安全です」と詭弁を弄していたようですが、詳細は後述*)、その後、農林省が隠蔽していた猛毒性を示す実験が明らかになり、71年4月には、国有林での除草剤としての使用は禁止となります。が、この余った枯れ葉剤のゆくえは・・・。



日本中の林野に埋められた枯れ葉剤

1971年4月。使用禁止となった枯れ葉剤の多くが、当時の農薬の処分方法に即して、灯油缶などに入れられたまま埋められました。1971年4月17日に農林省は枯れ葉剤の処分方法の通達を出していますが、多くがその通達の前にずさんに処分されたとのこと。その後、1984年に枯れ葉剤が埋められたことが問題になった時、どこに埋めたのかもわからないものも多々あるということもわかり、現在分かっているものが、15道県42市町村の山中ということです。(詳細は追記)


デジャブ?

枯れ葉剤の話を聞きながら、東京電力福島第一原発事故によってばらまかれた放射性物質のことを思わずにはいられませんでした。

枯れ葉剤も核もアメリカ由来の厄災というところがなんとも皮肉ですが、「枯れ葉剤」は安全と言って、*当時、ある学者は「塩素酸ソーダは塩みたいなものだ」と言ったそうで、「福島原発の処理水(=汚染水)は飲んでもたいしたことない」と言う現在の副首相にそっくり。また、水に溶けない性質の245Tを水槽に入れて、淡水魚に影響が出なかったことで安全にみせかけたのは、ベーター線を出すトリチウムが入っている処理水(=汚染水)に、ガンマー線を測るガイガーカウンターをかざしてみせるトリック同様、その狡猾さに愕然とします。


国連で禁止される程の猛毒の枯れ葉剤を、「除草剤」として全国に拡散させるところも、低レベル放射性廃棄物と分類されるべき「放射性汚染土」を「除染土」「再生資材」として、全国に拡散しようとしている現在にそっくりです。おそらく、今生まれた子どもたちが大人になった頃、「放射性物質がずさんに埋められている」と問題になっても、どこに埋めたかわからない!ということに、このままではなってしまうでしょう。



同じ轍を踏まないために

国産枯れ葉剤の由来と行方を知り、同じ轍を踏まないために何ができるのか?

ダイオキシンに汚染された土壌の処分について、原田さんがひとつの例を教えてくれました。福岡県久留米市で枯れ葉剤を製造していた工場跡。その土壌が基準の95倍のダイオキシンに汚染されていたことが2007年に発覚しましたが、そこでは住民の強い働きかけにより、汚染土壌は撤去され、処理された後に最終処分場に運ばれ、工場跡には新しい土が入れられるということで、7年の月日と130億円をかけて解決したそうです。


対象的に、2013年東京都の工場跡地で、1100倍のダイオキシンに汚染されていることが発覚しましたが、そこは盛り土をしただけで終わったようです。


現在の土壌汚染対策法では、「人が直接触れる」、もしくは「人が汚染物質が溶け出した地下水を飲む」などの危険性がないと考えられる場合は、「盛り土」でOKということになっているようですので(詳しくは、動画の55分からの井奥高砂市議の説明をご覧ください)、東京都の工場跡地の処分方法は合法であり、久留米市の方が「特例的」であったと思われます。



なぜ「汚染土壌」は除去されたのか?

イベントでは、動画にある講演の後、質疑応答などで情報交換が進みました。そこで、なぜ久留米ではそれだけの時間と経費をかけてまで汚染土壌が除去されたのかが見えてきました。その工場跡地の住民の皆さん、特にまとめ役の方が非常に強く汚染土壌の撤去を求めたそうです。もちろん当時の工場側の経営状態など様々な要因があると思われますが、地元住民の強い訴えというものが、決してむだではないと思いました。


また、最後に2019年に神奈川県の保育園などで問題になった放射性汚染土について、私からも情報提供をさせてもらいました。詳しくは下記リンク「横浜からの続報」をごらん戴きたいのですが、横浜市の保育園の園庭に除染で発生した汚染土が埋められたままになっていることを不安に思った保護者の皆さんの働きかけで、汚染土の撤去を横浜市に請願、市議会で却下されるという残念なことがありました。しかし、同じ神奈川県でも横須賀市の市立学校では、埋められていた汚染土は撤去され、下水道の処理施設に移設され保管されています。横須賀市在住でこの汚染土撤去に尽力された方に最近お話を伺い、やはり地元住民の強い訴えが行政を動かすには不可欠だと思いました。



放射性汚染土拡散を止めるために・・・と情報を集めていたら、ダイオキシン問題や土壌汚染対策法の不備やらと、さまざまな問題を目の当たりにし、今後どのように動いていくべきかを慎重に検討しなければ・・・との思いを深くした今回のイベントでしたが、ひとつだけしっかりと確認できたのは、地元住民として声をあげることの重要性です。


環境を守ることは、私たちの体、そして次世代の未来を守ること。しっかり考えて、声をあげていきましょう!


追記:日本中の林野に埋められた枯れ葉剤(原田さんより情報提供)

 1984年5月、「愛媛県の山中で枯れ葉剤流出」というニュースをきっかけに、全国の国有林に枯れ葉剤が廃棄されていたことが発覚しました。その後の調査で、①各地の営林署で保管されていたはずの枯れ葉剤が1971年秋に突然処分されていた、②処分の記録がなく、どこに埋めたかも当時の業者の記憶頼みで、場所の特定が困難、③すべて灯油缶や紙袋のまま廃棄されていて非常に危険、などが判明。しかし、その後、林野庁は発掘調査を中断。業者の記憶だけで特定した場所も含め、林野庁は15道県42市町村で「埋設箇所」を認定しました。現在、森林管理局が年2度の見回りを続けています。


関連リンク

■さよなら原発神戸アクションZoom茶話会4月の動画公開

http://sayogenkobe.blog.fc2.com/blog-entry-220.html


■猛毒含む除草剤、42市町村に埋設のまま 流出を懸念

朝日新聞DIGITAL 2021/1/26

https://www.asahi.com/articles/ASP1S73F9P1STIPE00B.html


■麻生財務相 “処理水”「飲んでもなんてことないそうですから」

TBS NEWS 2021/4/13

https://www.youtube.com/watch?v=24tDp5bKsRI


ガンマー線を測るトリックについて

■無見識さを露呈した「トリチウム汚染水は安全だ」と宣う福島県議。

このレベルの人らに安全性を判断させていいのか?

Harbor Business online 2020/11/29

https://news.yahoo.co.jp/articles/0e02c7b4bd1d56cbf757f67d21165daced7f6d3b?page=2


■横浜からの続報

「7世代に思いをはせて」第556号2019/6/8

https://nanasedai.blogspot.com/2019/06/556.html


■横須賀市立学校の側溝等放射線測定 (測定、除染、移設作業が報告されている横須賀市のサイトです。)

https://www.city.yokosuka.kanagawa.jp/8140/sokutei.html


後記:公害問題でのひどいトリックがここにも。。。

記事より一部抜粋させていただきます。

■水俣病「偽りの幕引き」60年 排水装置に機能なく…患者の思い

西日本新聞 2019/12/18

https://www.nishinippon.co.jp/item/n/569105/

水俣病の原因が有機水銀だと判明する前に発注された装置は、廃水に含まれる固形物を凝集・沈殿させ、水を透明化することが主目的。有機水銀を処理できないことは、実は試運転段階で分かっていた。にもかかわらず完成式典で、チッソ社長は「水銀が除去された」と称する水を飲むパフォーマンスまで演じた。

「家族がまともな生活をできるだけの補償もせず、効果もないまやかしの装置をつくる現場で働かせて…。何を先にせなんか、考えてほしかった」 




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