2023/08/17

 

運転開始より49年となる高浜原発1号機再稼働にみるヒトゴト

 まさかもう二度と動くことはないだろうと思っていた1974年に運転を開始した高浜原発1号機が2023年7月28日、12年ぶりに再稼働した。私の住む神戸から90キロも離れていない福井県高浜町にある関西電力の老朽原発が。


その再稼働の一報を聞いた6月末から、私はこの無謀としか思えない再稼働を止めるために、個人でもできることは何でもしようと思い、関電の大株主である神戸市、当時者の関西電力、そして原子力規制委員会に質問を出し、その回答を得た。


8月17日現在までのそのやりとりをこのブログにまとめておきたい。

福島第一原発事故という、今でも廃炉の行程さえよくわからないまま、使用済み核燃料や原子炉の倒壊の危機を抱えて、放射能を空に海に流し続け、何万人という人々の生活を破壊した惨劇が現在進行中のこの国の無自覚、無責任、ヒトゴト姿勢を、せめて記録しておくために。



--------原子力規制委員会とのやりとり-----------------


原子力規制委員会に質問 2023/7/20 

 高浜原発から90キロほどしか離れていない神戸に在住の者です。

先日、ある学習会で、圧力容器(鋼鉄)の脆化温度は、原子炉の運転期間が長くなると上昇するということで、使い始めは、-16度のものが、1年後には、35度、18年後には56度、34年後には98度で、高浜1号機は99度と紹介されていました。


これは、ほんとうでしょうか?

もしもほんとうなら、福島第一原発のように事故を起こしたときに、水で冷却しようとしても、圧力容器が割れてしまうのではないでしょうか?7月28日にも高浜1号が再稼働と報道されており、とても心配です。ご説明いただけたら、幸いです。


詳細:https://sayogenkobe.blog.fc2.com/blog-entry-217.html


7月25日に原子力規制庁より「電話で答える」との返信着

7月28日午前(午後には高浜1号機再稼働) 原子力規制庁の担当者に小橋より電話。


電話での会話まとめ

担当の回答 「脆化温度は99度だが、冷却時に(ECCSの)水をかけても圧力容器は割れないという計算になっている。」との計算上の話。その計算について公表されているサイトのリンクを後ほど送ると約束。

私が、「その計算方法が30年前のもので、新しい知見が反映されていないと井野博満さん(東京大学名誉教授)から聞いた」と言うと、「われわれも知見を取り入れるよう勉強している。井野先生にも、お話は聞いている」と返答。


今から、知見を勉強しても、もう高浜1号機は、今日の午後3時には再稼働なんです!事故ったら、私の所にも放射性物質が飛んでくるんです!と、思わず訴えてしまう。

その話の展開で、49年も前の原発が12年ぶりに再稼働されることになったことについて、私の疑問をぶつけてみた。


「コアキャッチャーもないのになぜ、世界一厳しい安全基準なんだ?」と聞くと、

「誰が言っているかは知らないが自分たち(規制委員会)は言ってない」と返答。


「避難計画もおろそかなのに、なぜ再稼働できるのか?」と聞くと、

「事故時の避難計画が適正かどうかを審査するのは自分たちではない」との返答。


また、脆化温度が高浜1号機よりも低い美浜2号や大飯1,2号が廃炉になっているのは、「関電の経営判断(規制クリアするためにお金をかけたくない)であって、圧力容器云々の話ではない。」と返答。


7月28日夕方規制委員会から送られてきた文書ファイル

関西電力株式会社高浜発電所1号炉の運転期間延長認可申請の実用炉規則第114条への適合性に関する審査結果 平成 28 年(2016年) 6 月 原子力規制庁



8月1日午後に小橋より返信 

「関西電力株式会社高浜発電所1号炉の運転期間延長認可申請の実用炉規則第114条への適合性に関する審査結果 平成 28 年 6 月 原子力規制庁」のファイルを送付いただき、ありがとうございました。


さらに3点ほど質問させていただきたいのですが、


1: P.10にある、原子炉容器の中性子照射脆化審査に関しての「評価」は、平成21年(2009年)に取り出した監視試験片を元にしていると考えられ、とても古いデータであると不安に思い、ある学習会で専門家の方に質問しましたところ、2009年のものは溶接金属を使った試験を元にしたもので、母材は2002年が最後とのことでした。本来なら、溶接金属も母材も同時に試験するべきところを別々にしか行っていないという解釈でよろしいでしょうか?


2: 母材の試験片は2021年に取り出され、結果は2023年8月にわかると聞きましたが、それで正しいでしょうか?


3: 1,2の解釈で良い場合は、8月の試験結果を待たずして、もうすぐ49年になる原発を12年ぶりに再稼働させたということになりますが、8月の試験結果に問題が認められる場合は、規制委員会としては、高浜原発1号機の運転停止、廃炉の判断を行えるのでしょうか?

学習会での資料を添付いたします。


詳細:https://foejapan.org/issue/20230718/13536/




8月3日にまた「電話で答える」との回答で、4日に小橋より電話をかけるが忙しいとのこと。何回か電話し、8月8日に担当者につながる。


質問の1は、この解釈でOK。すなわち、高浜は別々に試験片を取り出してやってる。

質問2は、関電に聞いてくれ。規制庁は報告を受けるだけ。

質問3は、今度のGX脱炭素電源法が施行されたら、30年超えの原発を運転したい事業者は、すべての30年超えのものについて書類を再提出することになる。

---------------------------------


いかがですか?この無責任なヒトゴト姿勢?

いったい原子力規制庁とは何のための組織なのか?

原子力規制庁ならば、せめて原子炉容器の中性子照射脆化審査に最新の知見を取り入れるよう業者に求めるべきだと思いませんか?また、母材と試験片を別年で審査することを許可したりするべきではないし、欧米を中心に新型原発では取り入れられているコアキャッチャーがなければ運転してはならないと規制するべきでしょう。


GX脱炭素電源法と言う名の「原子力推進法」、60年超えの原発の運転を可能にする新法のもとで、原子力規制庁が今以上に規制の方向に動くとは到底考えられません。



また、今回のやりとりで、原発事故が起きたときの避難計画も自治体に丸投げで、誰も責任をとる様子がないことにも大きな不安を感じました。


そこで検索して、見つけた文書に、改めて驚きました。

■ 原子力災害対策指針と 新規制基準(平成28年)原子力規制委員会委員長 田中 俊一と題した文書です。

そこには、福島第一原発事故からの教訓として、「無計画に無理な避難をしたことで多数の犠牲者が出た。」 「原発サイトの内外を含めて放射線被ばくによる確定的な健康影響は認められていない。」よって、「屋内退避を積極的導入する」という結論が書かれています。注意書きとして、「なお、複合災害時には、生命に関わる他の災害リスク対策を優先する。」とあり、地震で屋内退避する場所がなかったり、津波で逃げなければならなかったりすれば、もう被ばくしろ、と言うことのようです。



唖然とします。

福島第一原発事故前は、「原発は事故をしません」と言って、日本中に54基も原発を建てて動かしていた。

原発事故が起きた後は、「事故を起こしても被ばくしろ」と言って、古い原発までも稼働させる。

無茶苦茶でしょう?


この無茶苦茶を、原子力規制委員会、規制庁、電力会社、そして自治体も、国の方針だから、法律がそうだから・・・と、言い訳をしながら、ヒトゴトのように原発推進に加担していき、メディアもほとんど官報のように伝えるだけ・・・。


運転開始から40年となった2011年2月に、福島第一原発1号機を廃炉にしておけば、あのような過酷な原発事故は起きなかったかもしれない・・・この12年間ずっと悔やんできました。

しかし、この国の為政者は、あの事故を、「事故が起きても原発は動かしてもいい」日本にするために利用したのです。


これを止められるのは、ほんとうに国民しかいません。

私たちの暮らしと健康を守るために動く政治家を選び、またひとつひとつ疑問の声を上げていかなければ、彼らの利権のために被ばくさせられ、健康を害しても「関係ない」との強弁で、泣き寝入りの内に死んでいくはめです。


私は嫌です。

泣き寝入りはしません。

これからも、おかしいことはおかしいと言い続け、せめて記録に残します。



下記は、関西電力、神戸市とのやりとりです。

記録のひとつとして掲載します。


-------- 関西電力とのやりとり ---------------------


小橋より関西電力に質問 2023/7/13 

 原発の圧力容器の脆化について、質問です。

脆化温度は、運転期間が長くなると上昇するということで、使い始めは、-16度のものが、1年後には、35度、18年後には56度、34年後には98度で、高浜1号機は99度と、ある学習会で聞きました。これは、ほんとうですか?

また、その場合、高浜1号機を運転するのは、非常に危険ではありませんか?



関電より8月4日(高浜原発1号機再稼働後!返信着)

小橋さま

お世話になっております。関西電力広報室です。

原子炉容器の健全性評価で用いる脆性遷移温度は、脆化の程度を示す指標であり、その温度以下になると脆性破壊するといったことを示すものではありません。

原子炉容器の健全性評価では、監視試験結果で得られた脆化傾向を踏まえて将来の脆化程度を予測し、事故時など過酷な条件下においても原子炉容器に破損のおそれが

ないことを確認しており、高浜1号機のような初期のプラントであっても、原子炉容器の健全性に問題はないと考えています。

なお、関連温度(脆性遷移温度)については下記の通りHPで公開しているとおりです。

https://www.kepco.co.jp/energy_supply/energy/nuclear_power/info/knic/meeting/genshiryoku/cyuuseisi2_2.html

何卒よろしくお願い申し上げます。


関西電力株式会社 広報室



小橋より関電に8月8日に再質問

関西電力株式会社 広報室御中

ご説明をありがとうございました。

ある学習会で、高浜1号機の脆化温度の計算の仕方は30年前のもので、新たな研究結果などが反映されていないと聞きました。

また、高浜原発の原子炉容器の中性子照射脆化審査に関しての「評価」は、平成21年(2009年)に取り出した監視試験片を元にしていると考えられ、とても古いデータであると不安に思い、専門家の方に質問しましたところ、2009年のものは溶接金属を使った試験を元にしたもので、母材は2002年が最後とのことでした。

また、その方によると母材の試験片は2021年に取り出され、結果は2023年8月にわかると聞きましたが、それで正しいでしょうか?

福島第一原発も40年で廃炉になってたはずの一号機から事故は始まりました。

私の街から100キロほどしか離れていない老朽原発群(高浜1,2号、美浜3号)を思うと、非常に不安です。

新たな試験片の審査結果がいつわかるのか、また、どこで確認できるのか、教えてください。

---------------------------------


8月17日現在、関電よりの返信はありません。




---------- 神戸市とのやりとり -----------------


神戸市へのメール6月22日

神戸市環境局環境創造課 御中


6月28日の関電の株主総会を前に、

関西電力が、運転開始から49年を迎えようとする高浜原発1号機の再稼働するとの報道がありました。2011年からずっと止まっていた老朽プラントが、神戸から90キロほどしか離れていないところで再稼働するかと思うと、ほんとうに心配です。


添付の画像は、2014年の兵庫県による高浜の隣の大飯原発が放射能漏れ事故を起こしたときのシミュレーションですが、北風に乗れば、2時間で放射性プルームが神戸にも到達すると、当時の井戸兵庫県知事も答弁しています。


ほとんど審議も尽くされず拙速に決まった国の方針と、関西電力の経営判断によって、

神戸、関西の生活が脅かされることになります。


神戸市はこれまでも原発に依存しない電力供給を関西電力に株主として求めてきました。

来週の株主総会でも、その姿勢を明確にし、また関西全域の暮らし、経済に不安を与える老朽原発の廃炉を求めてください。



神戸市より6月28日返信着

小橋さま

お世話になっております。

神戸市環境局環境創造課です。


ご意見をいただきありがとうございます。

繰り返しになりますが、本市では原子力発電について、

安全性と地元理解を大前提として、国において判断すべきものと考えております。

市民の安心安全な暮らしと、市内事業者の活発な経済活動を守る立場として、

国の動向を注視し、庁内においても引き続き原子力発電に関する検討を続けて参ります。

---------------------------------


その後、7月28日に、つなぐ神戸市議団の香川議員と高橋前議員が神戸市と老朽原発再稼働について、神戸市として何らかの対策を求めて面談を実施してくださいましたが、神戸市は、上記と変わらぬヒトゴト対応だったと報告を受けました。



6月22日には、兵庫県に下記の提案をしましたが、8月17日現在返答はありません。

これまで何度も「さわやか提案箱」から提案してきましたが、返答がないのは初めてです。知事が変わったからでしょうか?

さわやか提案箱への提案

「事故時に放射性ヨウ素が放出された時のことを考えて、篠山市は安定ヨウ素剤の事前配布を実施しています。

https://www.city.tambasasayama.lg.jp/soshikikarasagasu/shiminanzenka/bousai/genshiryokusaigai/23144.html 

兵庫県内すべての自治体に事前配布するよう、知事に提案いたします。」




最後に、原発事故がどのようなものであるのか、兵庫県に避難されている菅野みずえさんのインタビュー記事をリンクします。ほんとうに、自分事として、考えなければなりません。


■原発がある限り、私の身に起こったことは、いつかあなたのことになる – 菅野みずえ

グリーンピース・ジャパン 2022/3/3

https://www.greenpeace.org/japan/campaigns/story/2022/03/03/55716/

「原発がある限り、私の身に起こったことは、いつかあなたの、誰かのことになります。私は〈3月10日〉を踏み越えてしまった今を生きているけれど、あなた方はまだ〈3月10日〉の分岐点にいる。これ以上、子どもたち・若い世代に重荷を背負わせない方角はどっちか、大人たちがどうか考えてください」


2014年には兵庫県もこのような
放射能拡散シミュレーションを発表し、自分事としていたのに・・・。


追記:

アクション情報

9・1(金)関電前「一食断食」行動 ~老朽原発うごかすな!
      ~とめよう!原発依存社会への暴走~
◆と き:9月1日(金)10:00~16:00
◆ところ:関西電力本店前(大阪市北区中之島)
◆主 催:老朽原発うごかすな!実行委員会 

12.3 (日) とめよう!原発依存社会への暴走 1万人集会 
日時 12月3日 (日) 午後 
場所 大阪市内
主催 老朽原発うごかすな!実行委員会

情報サイト

原発ってどこにある?今、動いてる?再稼働はいつ?

https://blog.goo.ne.jp/tanutanu9887/e/a43bbf55884c7e6832943f79a7f56b72



This page is powered by Blogger. Isn't yours?