2020/01/29

 

放射性汚染土の全国での再利用の問題点


現在、平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法施行規則の一部を改正する省令(案)」及び「環境大臣が定める者の告示(案)」に対する意見募集(パブリックコメント) として、環境省が、福島第1原発事故の除染作業で発生した放射性汚染土壌を全国の農地造成や公共事業で再利用するため省令を変更するパブリック・コメントを実施しています(2020年2月7日締め切り)。この変更内容についてはこの問題に関心のある者でもわかりにくい提示の仕方がされていますので、簡単にですが、問題点を指摘します。


放射性物質の取り扱いの大原則は厳重管理

福島第1原発事故によって環境中に放出された放射性物質について、環境省は8000ベクレル/kg以下ならば、一般ゴミとして処分し、今後は汚染土壌は農地の造成や公共事業で再利用するといった政策を進めています。

しかし、それ以外の原発から発生した放射性物質は、100ベクレル/kg以上のものは、低レベル放射性廃棄物として厳重保管されており、100ベクレル/kg未満のものでも、その再利用に当たっては、2回の測定、認可を得なければ放射線管理区域外に持ち出してはなりません(クリアランス制度)。それは、現在でも変わりません。 また、測定する核種も、環境省はセシウム134と137のみに限定していますが、本来ならばストロンチウムやプルトニウムも含む33種類を測定しなければなりません。


この矛盾は、福島第1原発事故発生前からある法律「原子炉等規制法」と、発生後につくられた「放射性物質汚染対処特措法(特措法)」との基準の違いによりうまれました。

なぜ、原発事故よってまき散らされた放射性物質のみが、これまでの法律が適用されないのでしょうか? 放射性物質には「福島原発由来」と書かれてあるわけではありません。このような例外がまかりとおれば、今後、他の原発や放射性物質取り扱い機関からの不法投棄があっても確かめようがありません。それ以前に、今の環境省のプランでは、8000ベクレル/kgを越える福島原発由来の放射性廃棄物や汚染土壌の不法投棄があっても、まったくわからないようなものになっています。

放射性物質の取り扱いの大原則は厳重管理です。
徹底管理することにより、放射能から私たちの暮らしと未来を守りましょう。

注:1ベクレルとは、1秒間に1本の放射線を飛ばす能力のことです。すなわち8000ベクレルの土が目の前にあれば、そこから1秒間に8000本放射線が飛んできて、あなたの細胞に当たる可能性があるということです。土埃となった放射性物質を吸い込めば、肺の中で放射線を飛ばし細胞を傷つけ続けるでしょう。


汚染土壌の再利用?
そもそもなぜ無用な被ばくを強いられなければならないのでしょうか?    


引用サイト資料2-2_福島県内における除染等の措置に伴い生じた土壌の再生利用の手引き(案)



環境省は表1に見られるように、作業者などの年間追加被ばくを1mSVに抑えるために検討し再利用の基準を決めたとしますが、そもそもなぜ無用な再利用工事で追加被ばくを強いられなければならないのでしょう?この検討の資料(表4)には、「周辺の子どもたちの外部被ばくは大人の1.3倍などで計算する」「子どもの吸入による被ばく」などの文言も見られます。子どもの追加被ばくを容認してまで、このような再利用が必要でしょうか?




また、上記と同サイトからの表11の経路NO.2.7では、作業員の呼吸量を1.2立方メートル毎時としていますが、選定根拠に書いてあるとおりこれは軽作業のもので、土木作業は重作業であることを考えると、ICRPを参考にしても建設作業の2.56立方メートル毎時を採用するべきではないでしょうか?




                                                    (資料提供:郷地秀夫医師)


これまでの法律との整合性は?

 今回の放射性汚染土の再利用について、放射性セシウムについての基準はあるものの、その汚染土に含まれている他の放射性核種が、原子炉等規制法の基準を越えていたらどうなるのでしょう?

下記のサイトにそれぞれの核種のクリアランスレベル(再利用の基準)が記載されています。



例えば、ストロンチウムのクリアランスレベルは、1000ベクレル/kg、プルトニウムは100bq/kgですが、もしも汚染土壌がそれらの基準を上回っていたらどうなるのでしょう?

また、現在のクリアランスレベル検認の制度では、2回の確認を得ないとならない中、今回の再利用のためにどのような制度が検討されているのでしょう?


1月28日に行われた環境省のヒアリングにおていも、同様の質問がなされていましたが、環境省の答えは、「届け出を確認する」というだけで、その届け出された汚染土がほんとうに8000ベクレル/kg以下なのか、実は数万ベクレルではないのか、わからないような制度になっています。
環境省ヒアリングhttps://twitcasting.tv/makomelo/movie/590506822


現在、環境省が変更しようとしている汚染土壌の再利用計画は、既存の法律の枠組みにも従っておらず、非常にずさんなものと言えます。そもそも放射性物質は集中管理が鉄則です。今回の未曾有の原発事故においてこそ、その鉄則を守らなければ、現在だけでなく未来にも禍根を残すことになるでしょう。この汚染土壌の集中管理は可能です。詳しくは、拙ブログをご覧ください。
■放射性汚染土・廃棄物を拡散しないために


また、国が決めた法律も、地方自治体の条例などで止めることができます。拙ブログにまとめておりますので、ぜひご覧ください。


■放射能汚染防止法の制定に向けて



この汚染土壌がなぜ危険なのか?空間線量では測ることなどできない、汚染土壌に多く含まれるセシウムボール(不溶性放射性微粒子)による内部ひばくの危険性を郷地秀夫医師の講演会を元にまとめさせてもらっています。

■ここまでわかった内部ひばく~セシウム・ボールのゆくえ~
http://flowersandbombs.blogspot.com/2019/06/


環境省の汚染土再利用についてのパブコメは2月7日が締め切りです。名前も何も記載しなくて、一言でも投稿できます。ぜひ、「放射性物質は集中管理するべき」だけでもコメントを投稿してください。

あきらめることなく、放射性物質から国土と未来を守るために動き続けましょう。





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