2021/06/10

 

再エネ時代の日本は「資源のあふれる国」

先日、原子力市民委員会(CCNE)連続オンライン企画「原発ゼロ社会への道」第7回 新しいエネルギー基本計画はどこに向かうのか?(2021年6月7日)にzoomで参加しました。


運転開始から40年を超える老朽原発(美浜3号機)を動かそうとする、政府や関西電力、そして地元自治体は、いったいどのような日本のエネルギーの未来を考えているのか?それが示されるのが「第6次 エネルギー基本計画」だろう、その問題点を知ろうと思い、大島堅一氏(龍谷大学政策学部教授、CCNE座長)の解説と、竹村英明氏(グリーンピープルズパワー代表取締役、CCNE原発ゼロ行程部会)のコメントを視聴しました。


詳しくは、リンクに当日の資料が掲載されていますし、また後日動画も公開されると思いますので、そちらをご覧ください。→ http://www.ccnejapan.com/?p=12217 



当ブログでは、印象に残ったことをできるだけ簡潔にまとめたいと思いますが、一番印象深かったのは、竹村氏のこのような指摘でした。

「もう、ヨーロッパじゃ再生可能エネルギーが余って、どうやって使うかって話になろうとしているのに、日本ではいつまでも再エネに目標という名の天井を設置している状況」


そして、大島氏の警鐘。「原発は衰退産業。いくら国が支援してもどうしようもないことは分かっている。エネルギー基本計画に原発10%とか20%とか資源エネルギー庁は入れたいと思っているだろうが、それはさせてはいけない。数字が入ってくるとそれを達成するために、あらゆる努力と予算が原発に注ぎ込まれる。すなわち育成すべき再エネ産業を抑制することになる。」ということで、原発維持のために再エネを抑制しているのが「第6次 エネルギー基本計画」のようです。



さて、いかに原発が衰退産業であるか。資源エネルギー庁作成の下図をご覧ください。


出所:「2030年に向けたエネルギー政策の在り方」(第41回総合資源エネルギー調査会 基本政策分科会、資料1、p.110) 令和3(2021)年4月22日 資源エネルギー庁https://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_subcommittee/2021/041/041_004.pdf


「建設中の原発が2030年に運転開始する」、また「設備利用率を80%とする」など、かなり甘い想定で、原則である運転開始から40年で廃炉ではななく、60年運転のシナリオにしても、原発の設備容量がどれほど減少するのかが示されています。


また、この図ではわかりませんが、大島氏の解説によると、2021年の実際の再稼動原発は残存原発の約3分の1の913万kWに過ぎないとのことで、この図で示される設備容量と、実際の発電量は現時点でも大きく違うことがわかります。


一方、竹村氏のコメントによると(詳細は竹村資料の2.日本の再生可能エネルギーポテンシャルをご覧下さい)、日本の電力需要は1兆1706億kwh(2018年概要)で、環境省が毎年行っている調査では、日本の再エネのポテンシャルは7兆kWh超えと総需要の7倍。環境に配慮するなどした現実的な「導入可能量」でも2.5倍であることが示されていて、日本は再エネ資源大国とのこと。


上図の原発設備容量と比べるために単位をそろえると、「導入可能量」は太陽光発電で4億622万kW(5041億kWh)で、風力発電は6億2884万kW(2兆123億kWh)。上図の最大量である2030年の36基の設備容量3722万kWと比べると、どれほど原発のポテンシャルが低いかに愕然とします。


原発がいかに危険でやっかいなものであるかは、ここで繰り返す必要もなく、福島第一原発事故、そして核のゴミの始末を少し思い出すだけで十分でしょう。


以上、原子力市民委員会(CCNE)連続オンライン企画「原発ゼロ社会への道」第7回からのご紹介でした。。


最後に、福島第一原発事故からの10年で、どれほど世界が変わっているかを示す記事をご紹介します。

■「再エネは安い」が世界の常識、なぜ日本は高いまま? 普及遅れれば企業に打撃も

朝日新聞Globe+ 2021/6/6 https://globe.asahi.com/article/14365333 より、以下引用

「再生可能エネルギーは環境にいいけど高い――。そんな日本の「常識」は、再エネが普及する世界の「非常識」になっている。この10年で世界の風力発電と太陽光発電は急成長を遂げ、設備容量はそれぞれ原発を上回っている。」


「ESG(環境・社会・ガバナンス)投資」が拡大し、気候変動対策に積極的でなければ企業は資金調達が難しくなったり、株価が下落したりするおそれがあるなど企業価値に直結するようになった。高村さんは「再エネを増やすのは気候変動対策でありエネルギー政策だが、それ以上に産業政策、雇用政策としての重みが増している」と指摘する。

~引用ここまで~



日本もようやく、「2050年までのカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量の実質ゼロ達成)」「30年度に46%削減」と宣言しましたが、エネルギー基本計画を検討する「総合資源エネルギー調査会・基本政策分科会」では、再生可能エネルギーの本格導入よりも、「原子力政策の再構築」の必要性や、新たな技術を前提にした化石燃料の利用に重点が置かれているのが現状です。


これまで膨大な予算が投じられてきた原子力や、企業が投資してきたのが化石燃料・・・そのマネーにつながる利益ネットワークは強固なものがあると思われます。しかし、衰退産業に税金を投入し、市場での資金調達難しくなる化石燃料にしがみついていては、日本はますます世界から取り残されていくでしょう。ここは、日本の再生可能エネルギーのポテンシャルに注目し、温室効果ガス排出量ゼロと原発ゼロを達成することにより、環境、暮らし、命を守る未来予想図をしっかりと立てる時ではないでしょうか?


化石燃料時代は、日本は「資源の少ない国」でしたが、再生可能エネルギー時代の今は、日本は「資源のあふれる国」。新たな認識で、新たな時代を切り開きましょう!



追記:

現在、資源エネルギー庁は、エネルギー政策に関する「意見箱」を設置して、国民の意見を募集しています。私も上記のような意見をまとめて、提案を送ろうと思います。

■エネルギー政策に関する「意見箱」

https://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_subcommittee/opinion/index.html


関連ニュース:日本もドイツに続くことを願って。

■ドイツ、来年末に脱原発を実現 環境相、再生エネルギーへ集中

共同通信社 2021/3/3

https://this.kiji.is/739781872659808256

 
2021年3月11日の神戸の空


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