2013/10/31

 

特定秘密保護法案で思い浮かぶあれこれ


安倍政権が、というのか、これまでもこのような法律を作りたがっていた者たちが勢いを増してというのか、特定秘密保護法という名のもとに、国民に「何が秘密か」も知らせず、「秘密を知ろうとした」と国民を処罰できるような体制が出来上がろうとしています。



このような法案が本当に法律として機能するようになれば、これは戦前の治安維持法の再来の様相を呈することになるのかもしれないし、もしくは戦後のGHQによる占領期を彷彿させることになるのかもしれないし、あるいは2011年9月11日の同時多発テロを受けて成立したアメリカの「愛国者法」の日本版というものになるのかもしれません。


いずれにしても、特定秘密保護法とは、国民はなす術もなく、これまで長い時間をかけて市民が勝ち取ってきた自由という権利を「侵害されてもしかたがない」と思わせる装置だと、私は思うのです。



なぜそのようなことを思うのか?

日弁連のあげる問題点を引用すると・・・ 注1

・「特定秘密」の対象になる情報は、「防衛」「外交」「特定有害活動の防止」「テロリズムの防止」に関する情報です。
・これはとても範囲が広く、曖昧で、どんな情報でもどれかに該当してしまうおそれがあります。
・その上、刑罰の適用範囲も曖昧で広範です。どのような行為について犯罪者として扱われ、処罰されるのか、全く分かりません。


問題点とされるほんの一部を紹介しただけでも、歴史の教科書で習った「治安維持法」を思い出してしまいます。治安維持法も「共産主義革命運動の激化を懸念したもの」として発足したそうですが、果ては政府批判はすべて弾圧の対象となっていったのです。


このような特定秘密の内容も、刑罰の適用範囲も曖昧で広範な法律が施行されれば、どのように運用されるのか?時代の流れによっては、「治安維持法の再来」となっても不思議ではないでしょう。




また、東京電力福島第一原発事故とこの特定秘密保護法案から、思い出されるのはGHQ占領期の日本での米軍による原爆被害に関する情報隠蔽と取り締まりの歴史的事実です。


終戦当時28歳で軍医だった肥田舜太郎先生の言葉が思い出されます。注2

「マッカーサーが日本にやってきて、いろいろと日本人に『してはならないことを』ずらずらと発表した。彼らは賢いからそんなことを書面になんて残さない、口頭で発表するだけです。その中で私が一番許せないのは『原爆によってもたらされたものはすべて米軍の機密であるから、一切公表してはならない。医師は治療をしても良いが、それを他の医師と話し合ったり、論文に発表したり、研究してはならない』というものです。あの頃からしっかり研究ができていれば・・・と悔やまれてなりません。」


それでも、「患者を救いたい」との思いで、いろいろと症例などについて調べた肥田先生は、「機密を入手しようとした」疑いをかけられ何度も逮捕されたそうです。


原爆も被爆による影響も、軍事機密なのです。特に低線量被曝による人体への影響が、核戦略の維持のために、分かりにくいものにされてきたことは、これまでも当ブログでも様々な専門家の言葉を紹介させていただきました。注3


そして、昨年変更された「原子力基本法」では、「原子力利用は、(中略)我が国の安全保障に資することを目的として、行うものとする」としっかりと付け加えられています。注4


原子力基本法の変更とこの特定秘密保護法案・・・、また「安全保障」という名のもとに、多くの事実が隠されていくと、思い巡らせることは当然ではないでしょうか?





最後に、9・11同時多発テロから45日で成立したアメリカの愛国者法のことを書きましょう。愛国者法も、米国内外のテロリズムと戦うことを目的として作られた法律ですが、司法当局の権限が大幅に拡大され、市民の自由を侵害しています。




興味深いことに、このブログの記事を書こうとして、「愛国者法」を検索したら、ジャーナリストの堤未果さんのブログにヒットしました。彼女も「特定秘密保護法案」の動きから、愛国者法と治安維持法を思い出したようです。非常に具体的に、愛国者法がどのように運用されているのか、また「特定秘密保護法案」がどのように私たちに影響を与えるのかを書かれていますので、ぜひご覧ください。

・堤未果氏のブログ:いま、最も危険な法案とは?
http://blogs.yahoo.co.jp/bunbaba530/67754267.html


市民の自由を何よりも重要とする文化であるはずのアメリカにおいても、911というショックの後、「愛国者法」のような法律が簡単に成立してしまった。このような現象に、ジャーナリストのナオミ・クライン氏が呼ぶ「ショックドクトリン・惨事便乗型資本主義」を思い出します。もともとは、政変・戦争・災害などの危機的状態につけこんで、人々がショック状態や茫然自失状態から自分を取り戻し社会・生活を復興させる前に、過激なまでの市場原理主義を導入し、経済改革や利益追求に猛進するといった経済的なことを意味してきましたが、注5

911といい、福島第一原発事故といい、このような惨事を利用して、国家権力を強めようという動きも、これに加わっているのかもしれません。



特定秘密保護法案・・・、それによって何が隠されようとしているのか・・・私たちは知らなければならなりません・・・恐らく私たちの命に関わることになると思うから・・・。

あれこれと思い浮かべる2013年の秋です。




注1:秘密保護法とは?(日本弁護士連合会)
国の安全保障に関して特に重要な情報を「特定秘密」に指定し、それを取り扱う人を調査・管理し、それを外部に知らせたり、外部から知ろうとしたりする人などを処罰することによって、「特定秘密」を守ろうとするものです。
http://www.nichibenren.or.jp/activity/human/secret/about.html


注2:肥田舜太郎医師のお話②「外国の軍隊に占領されるということ」
ブログWords for Peace http://flowersandbombs.blogspot.jp/2011_08_01_archive.html


注3:ブログWords for Peace より
・繰り返される過小評価:放射線被曝の危険性~広島・長崎~チェルノブイリ~福島
http://flowersandbombs.blogspot.jp/2012_07_01_archive.html

・被爆者医療から見た原発事故・その2
~プロモーションとイニシエーション:福島子ども調査を受けて~
http://flowersandbombs.blogspot.jp/2013_06_01_archive.html


注4:原子力基本法
最終改正:平成二四年六月二七日法律第四七号
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S30/S30HO186.html

社説:原子力基本法 「安全保障目的」は不要
毎日新聞 2012年06月23日 02時32分
http://mainichi.jp/opinion/news/20120623k0000m070110000c.html


注5:ドキュメンタリー映画『ショック・ドクトリン』
http://shockdoctrine.jimdo.com/




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