2015/01/11

 

オレンジの花・詩会


アフガニスタンの土漠地帯にて「緑の大地計画」という水路建設を続ける中村哲医師からのメッセージが、年末に届いたペシャワール会報(122号)に綴られていました。少し内容をご紹介いたしますと、

活動をされているアフガニスタンのジャララバードでは外国軍の撤退に伴って、少しずつ治安の回復の兆候が見られること、

そのため工事は例年以上に活発に続けられていること、

とはいえ、大自然が相手なので、希望通りにはなかなか進まず、大河による浸食との闘いであること、

そして、数百年前から続いてきた文化行事「オレンジの花・詩会」が開拓地ガンベリ農場で開催されること。アフガニスタンのパシュトゥーンの人々はとても詩が好きということで、この詩会では、身分や貧富、政治的な立場も超えて人々が集まり、即興詩の掛け合いが行われるということです。


その様子は、日本の和歌にも似ているということで、私も長らく趣味で短歌を作り続けており、また拙著『花と爆弾』も日本語と英語の短歌を収めたもので、アフガニスタンの小さな教室で英語の教科書をして使ってもらったこともあるので、この詩会の開催を知り、とてもうれしくなりました。

2015年の新年は、パリでの「イスラム国」や「アルカイダ」に関係するという「イスラム過激派」の凶悪な犯行で始まり、ヨーロッパを中心に、暴力と憎しみの連鎖が巻き起こりそうな、不穏な年の初めとなりましたが、

アフガニスタンの地で、悲惨な戦乱と干ばつを皆の力で乗り越え、詩を愉しむ時間と空間があるということに、人として生きることの希望を感じさせてもらいました。


その詩会の空間には参加できませんが、心だけでも参加させてもらいたいと思い、この記事を拙歌で終わりたいと思います。


如月の雪をまといて薄闇をしだれ桜の白く沸き立つ
小橋かおる 歌



花は咲いていなくても、しなやかな枝に堅いつぼみをつけ、
冷たい雪さえも美しい衣にして、すっくと立ち続ける冬のしだれ桜が、
まるでアフガニスタンの人々と中村医師の
凜とした魂の化身のように思えます。

しだれ桜ではありませんが、父のふるさとの大木の桜です。
アフガニスタンにもいつか「満開」の時代が訪れることを祈って。


追記:
今日は1月11日。エジプトでのアラブの春が始まってから、4年。そして、東日本大震災から3年と10ヶ月。混乱と悲しみは果てることがないように思えますが、自然や詩を愉しむ心、命を慈しむ愛を胸に、自分を忘れずに生きていかなければならないと、17日で震災から20年となる神戸に生きるものとして、強く思います。

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