2019/11/30

 

放射能汚染水の拡散を止めるために~わたしたちにできること~


9月17日に、松井大阪市長が福島第1原発事故によって溜まっている「原発処理水」を「処理水は海の環境や人体に影響ない、ただの水」であり「大阪湾で受け入れる」と発言したことを受けて、私の地元の兵庫県でも、放射性汚染水の拡散を心配する声が高まり、私も僭越ながら放射能汚染についての学習会の講師などをさせていただきました。今回はその学習会の要点をまとめさせてもらいたいと思います。


原発「処理水」は「ただの水」?

福島第1原発事故によって溜まっている汚染水の処理については、経済産業省が管轄ということになっていて、(どう考えても環境や人々の健康よりも原発推進のためにある)経産省は、手っ取り早く安価に汚染水をなくしてしまいたいと思っているようです。2018年にも彼らは「汚染水は海洋放出しかない」というようなことを言っていましたが、先日も、このような発言をしていました。
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■原発処理水放射線「影響小さい」1年全量放出で、経産省が推計
共同通信社 2019/11/18  https://this.kiji.is/568962438933234785

しかしながら、当事者の東京電力はやはり「影響が小さい」などとは言えないようで、このように発表しました。
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■トリチウム処分量、東電が試算 年最大106兆ベクレル
朝日新聞DIGITAL 2019年11月18日
https://www.asahi.com/articles/ASMCF7GF8MCFULBJ00Z.html

この記事の中で、海洋放出した場合トリチウムの年間処分量は約27兆~106兆ベクレルになるとしていますが、この106兆ベクレルという値がどれほどケタ外れな汚染かがわかれば、松井市長も誰も、海洋放出が良いと考えられないと思いますので、その点に絞って説明します。


よく「トリチウムは他の稼働中の原発でも放出しているから大丈夫」と言う人がいますが、通常運転の原発でどのようにトリチウムが放出されているのかご存じですか?

こちらに原子力市民委員が作成された資料があります。


これによると現在保管中の汚染水のトリチウム濃度は100万~450万ベクレル/Lとなっていおり、下図にある日本の通常運転中の原発の排出基準6万ベクレル/Lより、ケタ外れに汚染濃度が高いことがわかりますね。


また、保管中の汚染水のトリチウム総量は、1200兆ベクレル~5200兆ベクレルで、事故以前の福島第1原発のトリチウム年間放出量は、1~2.6兆ベクレルです。
単純に計算したら、現在保管中の汚染水を以前の福島第1原発の放出量で放出するとしたら、1000年以上がかかってしまうことになります。東電の試算の106兆ベクレルでも100年以上かかります。(ただし、放射能は減衰するので、トリチウムだけの汚染だと100年ほどで排出基準以下になります。詳細は後記)

トリチウムだけを見ても、どうみても「ただの水」でもなく、他の原発から放出されているレベルの「処理水」でないことは明らかですし、また気をつけなくてはならないのは、現在保管中のものはトリチウムだけでなく、2018年8月の河北新報などの報道で、2017年度のデータでは、ヨウ素129、ルテニウム106、テクネチウム99が告示濃度限度を65回超えていることがわかっています。これは大阪湾だけではなく、どこの海にも放出してはいけない放射能汚染水です。



保管中の放射能汚染水をどうする?

また「では、この汚染水をどうするんだ?永遠にあそこに保管するのか?」と言う人もいますが、もしも東京電力や経産省が言うように、トリチウム以外の核種を取り除いて「トリチウム水」「処理水」にできたなら(ALPSと呼ばれる多核種除去装置がきちんと稼働するならば)、トリチウムの半減期は12.3年なので、50~77年の保管で、排出基準の6万ベクレル/Lまで減衰します。

「どこに保管するんだ?」との質問には、大型石油タンクを10基ほど造れば保管できるので、福島第1原発の周りに広大に広がる1600ヘクタールの中間貯蔵施設の一部を利用すれば良いというのが答えでしょう。


以上、原子力市民委員会の資料を元に、簡単に問題点と解決案を紹介しました。この提案は、下記のサイトでもっと詳しく説明されていますので、ぜひご覧ください。

■安易な汚染水放出は許されないことを分かりやすく説明してくれています
原子力市民委員会のプレゼン資料
http://www.ccnejapan.com/documents/2019/20191003_CCNE_kawai.pdf

■原子力市民委員会 原子力規制部会
「ALPS 処理水取扱いへの見解」を発表、関係大臣に送付しました
http://www.ccnejapan.com/?p=10445

また、汚染水の長期保管の方法をFoEJapanさんがわかりやすくまとめてくれています。■ALPS汚染水「モルタル固化による陸上保管案」を新たに提案――原子力市民委員会
https://foejapan.wordpress.com/2019/10/05/1005/


放射性物質は、水であろうと土であろうと廃棄物であろうと、集中して厳重管理が鉄則です。放射能汚染水の安易な海洋放出には、しっかりと反対していきましょう。


最後に、とても勇気づけられるニュースをご紹介します。

■原発処理水の大阪湾放出に反対 関西の議員らが申し入れ
神戸新聞NEXT 2019年11月28日
https://www.kobe-np.co.jp/news/zenkoku/compact/201911/0012915492.shtml

■議員らが処理水放出反対意見書
NHK 関西NEWS WEB 2019年11月28日
https://www3.nhk.or.jp/kansai-news/20191128/2000022857.html

丸尾まき県議は
頻繁に市民の学習会にも
参加してくれています。
以前も兵庫県での震災がれきの受け入れについて「放射性物質には厳重な注意を」と兵庫県本会議で質疑してくださった丸尾まき県議会議員が、今回も動いてくださいました。

国がきちんと仕事をしないのなら、市民と自治体議員が繫がって、自治体を動かしていかなくてはならないと思っています。今後も、議会、行政への働きかけを続けます。


■20190921 「ちっちゃい こえ」があつまって 第2部 トーク・セッション
https://www.youtube.com/watch?v=6lw_Z3COwbo&feature=youtu.be
上記の動画の50分あたりから、私からの「自治体アクションの提案」を、また、最後の方で丸尾議員の発言もご覧いただけます。

このブログを最後までお読みくださったあなたが、ご自分の地域で、放射性物質の拡散を止めるために動いていただければ、とても嬉しく思います。

この国をこれ以上放射能で汚染しないための技術も経済力もこの国にはあります。この国に住むわたしたちが、しっかりと私たちの環境と未来を守っていきましょう。


神戸市会の市民派会派「つなぐ」の市議の皆さんにも
放射性汚染水と汚染土について説明させてもらいました。
2019年10月10日




「つなぐ」の小林るみ子市議の10月29日の本会議での
放射能汚染水についての神戸市長への質疑が、
「つなぐ」の会ニュースで紹介されています。




11月24日の学習会の様子@尼崎
みなさん熱心に聞いてくださって、感謝☆







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