2012/09/16

 

23年ぶりのパースで



私が住んでいた町サウスパース
まだあまり変っていなかった♪



その対岸のパースの中心街
これからまだまだたくさんのビルが立ち並ぶようだ













日本がバブル真っ盛りだった1989年、私はオーストラリアの西の都市パースに留学していた。戦後の経済復興から、先進国に「追いつけ、追い越せ」という経済成長だけを目指しているような日本で育った私には、あの頃のパースは別世界だった。ぼちぼち働いて、夕方はビーチを散歩したり、友人とビールを飲んで語らったり、土日は店もほとんど休みなので、家族や友人達とバーベキューを楽しんだり。古い物を修理して大切に使い、余分なおカネがなくても、安心して楽しく暮らしている人々のゆったりとしたリズムがとても心地よかった。



この夏、不意に思い立ち、23年ぶりにパースを訪れたわけだが、街の概観は大きくは変っていないが、街の経済は23年前の日本のバブル経済そのもので、なんとも不思議な感覚に陥った。買い物に行くと、物価は3倍になっていた。当時、1ドルほどで買えていた食パンが3ドル以上した。ペットボトルの水も300ml入りぐらいのものが、4ドル近くする。今、1オーストラリアドルが80円ほどなので、日本より少し高い程度なのだが、この物価では、最低賃金も3倍になっていないと暮らしていけないな~と思い、地元の人に聞いてみると、だいたい時給20ドルぐらいが相場だという。23年前は7ドルぐらいだったので、やはり3倍なのだ。それを聞いて少し安心したけれど、気になるのは以前は全く見かけなかったホームレスの人々の姿。毛布に包まって寝ている人や、ホームレスの人々が社会復帰できるために作られた雑誌『The Big Issue』を売る人の数の多さに驚いた(神戸では、三宮と元町の2ヶ所ぐらいでしか販売員を見かけないが、パースの中心部だけでも、3、4人が売っていた)。


パース駅の外観は23年前とあまり変らないが・・・






オーストラリア版ビッグイシューA$5










駅の中は近代的に大変身@@















街は再開発の最中で、あちらこちらが工事中だ。日本のバブルのころと同じように奇抜なデザインの建物もたくさん建てられている。街へのアクセスの良いエリアの住宅も高騰している。日本で言う3LDKほどのマンションが1億円を超えていた。少し郊外でも相場は5,6千万円だ。芝生が広がっていたスワン川沿い広場の半分は、オフィスビルとカフェやショップが入るビジネスエリアとして生まれ変るために大規模な工事が行われていた。街の北側も広大なエリアが工事中で、3年後にもう一度訪れることがあれば、昔からの建物はほとんど姿を消してしまっているかもしれない。


奇抜なデザインで改装中の
パースエンターテイメントセンター

北側から見た市中心部
あのガラス張りのビル群をビジネスマンが闊歩していた















もうずっとパースに住んでいるオーストラリア人の友人数人と何度か食事をしながら話す機会を持てたが、口々に今のパースを嘆いていた。パースの人口も3倍近くになり、電気代はこの数年で2倍に値上がりしたという。これだけ好景気のようなのに、社会保障は以前よりもずっと少なくなった。以前は無料だった教育費も公立学校に通わせても年間20万円ほどかかるという。私学に行かせる人も増えたようだが、その場合は200万円足らずかかる。年金生活の友人は、医者に見てもらうのはおカネがかかるから(私の記憶では以前は高齢者は無料だったはず)、緊急時にしか病院には行けないと言う。「街は変ってしまった。皆、貪欲におカネのことばかり考えている。」「でも、私にはフリーマントルドクターがいるから大丈夫」と77歳になる友人は、窓から吹き込んできた風を受けながら笑った。お昼を過ぎるとインド洋から涼しい風が吹いてきて、人々を癒してくれる浜風のことを、地元の人はフリーマントルドクターと呼んでいる。エアコンの効いたオフィスビルで働くビジネスマンは、この心地よい風に気が付くことはないのだろうけれど。。。


港町フリーマントルを望むビーチ
インド洋の白い砂とエメラルドグリーンの海は変らず輝いていた


追記1:

このバブルのようなパースの好景気と急成長は、中国やアジア諸国の経済発展により石炭や天然ガスなどの地下資源への需要が増えたことによるものだそうで、連日テレビも新聞も中国の経済成長の鈍化について報道していた。需要減により資源の値が下がることを懸念しているのだ。若い世代は将来の好景気を見込んで家や車やたくさんの物をローンで購入しているようで、今後も同じように好景気が続いてくれることを望み、また続かない事態が来ることをとても怖れているように見えた。今、西オーストラリア州では、ウラン鉱山の採掘が始まろうとしている。その鉱山の近くに住むアボリジニ(先住民)の人々や、心ある市民はウラン採掘を反対しているが、収益の数字しか見ない大企業の株主たちと彼らのために働くビジネスマンたちに占拠されたようなパースやオーストラリア政府に、彼らの要求を拒否するだけの力があるのか。。。命と自然を愛する人々の声が、政策決定に反映されることを望んでやまない。


2012年9月10日の地元紙に掲載された読者の意見
「福島の悲劇を繰り返す一歩となるウラン採掘をやめて」と書いてくれていた


追記2:

今年の9月11日は久しぶりに友人達と食事をするというようなプライベートな時間を持てたのだけれど(2004年からずっと「花と爆弾」のチャリティ・イベントに奔走していたので)、日本語を勉強しているからと私との食事会に参加したオーストラリアの学生は、あたりまえのことのように「来週、義理の兄がアフガニスタンに派兵される」と語っていた。彼女の周りには他にも家族がアフガニスタンに派兵される人がたくさんいるという。テレビにはアフガニスタンで先週戦死した3人の若者への追悼の様子が映されていた。2001年からいわゆる「対テロ戦争」に参戦しているオーストラリア。戦時国であることが日常となってしまったことが、とても哀しい。



9月は早春
ワイルドフラワーが花さかり♪

サウスパースではインコやブラックスワンも迎えてくれました














追記3:

今年ももちろん「花と爆弾」チャリティ・イベントは開催します。1週間ほど日本を離れたことで、自分がなすべきことの一層明確なビジョンが持てたような気がします。


☆「花と爆弾」チャリティ・イベント

2004年から毎年9月に開催させていただいているチャリティ・イベント。
今年は未来に可能性を感じる映画をお届けしたいと思います。

■ドキュメンタリー映画
「シェーナウの想い~自然エネルギー社会を子どもたちに~」
上映会 + トーキングサークル(交流会)

日時:2012年9月29日(土)
13:30~16:30 (13:00開場)
場所:サラ・シャンティ(阪急六甲駅南徒歩すぐ)
参加費:無料(募金をお願いします)
主催:「花と爆弾-もう、戦争の暴力はやめようよ-」
お問い合わせ:小橋かおる kaorukobashi@hotmail.com
または、健康道場サラ・シャンティ http://www.npo.co.jp/santi
 Tel&Fax:078-802-5120

・イベントの詳細はこちらをご覧ください↓
http://whatsnew-on-flowersandbombs.blogspot.jp/2012/08/9292012.html 

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