2020/02/03

 

放射性物質拡散を止めるために、地方自治体からできること

放射性汚染土が全国で再利用されようとしています
神戸の山と海と空

限在、環境省は省令の変更をもって、福島第1原発事故で環境中に放出された放射性物質の除染作業によって発生した汚染土壌を、「再生資材」として全国の農地造成、公共事業で再利用しようと動いています。
2020年1月8日から2月7日まで、この省令変更のパブリックコメントが実施されていますが、その内容は曖昧、ずさんそのもので、パブリックコメント制度にも値しないものだと私は思います。そもそもこの再利用計画がずさんであることから、それを世間に知られないようにして、4月1日から省令変更し、再利用の実績を積み重ね、汚染土を拡散し、目に見えない状態にすることが、環境省の目的ではと私は思います。

この汚染土再利用の問題点については、拙ブログでまとめていますので、ご覧ください。
■Words for Peace 2020年1月 放射性汚染土の全国での再利用の問題点
http://flowersandbombs.blogspot.com/2020/01/


汚染土拡散を止めるために自治体からできること
さて、環境省の省令が2020年4月1日に変更されるとして、放射性物質の拡散を止めるために私たちにできることは、もうないのでしょうか?
いいえ、まだまだたくさんあります。そのひとつが地方自治体で止める、行政や条例で止めるために動くことです。

一例としてあげられるのは、2018年の国による種子法廃止の時のような動きです。兵庫県は種子の安定供給を継続するための条例制定を進め、種子法廃止と同日に、「兵庫県主要農作物種子生産条例」を施行しました。
■優良種子の安定供給継続へ 兵庫県が条例案作成
神戸新聞NEXT 2018.02.27
https://www.kobe-np.co.jp/news/keizai/201802/0011021583.shtml

また、この条例による「種子法存続」は全国に波及。
■11道県で新たに条例制定-種子法廃止で
農業組合新聞電子版 2019.07.01 
https://www.jacom.or.jp/nousei/news/2019/07/190701-38430.php


このような動きが全国の自治体でなされれば、放射性汚染土の再利用による放射性物質の拡散も止めることができます。

ひとりの県民としての兵庫県への働きかけ
そのために私たち個人ができることは小さいですが、私は兵庫県の「さわやか提案箱」という提案の仕組みの活用や、県議会議員への働きかけなど、思いつくことをひとつひとつやってきました。

「さわやか提案箱」
兵庫県は、種子法の時も全国に先駆けて条例を施行しました。また、福島第1原発事故後の震災瓦礫の焼却処理の時も、井戸知事は「100ベクレル/kg以下なら」と震災瓦礫の受け入れ基準に言及しました。そして、大阪湾に福島第1原発事故の汚染水を放流するという大阪市長の発言にも、「慎重であるべき」と発言しています。
また、兵庫県にはすでに「産業廃棄物等の不適正な処理の防止に関する条例」の「土壌安全基準」があることも知り、以下のような働きかけをしてきました。


これまでの兵庫県とのやりとりをまとめます。
まず、資料1の質問を兵庫県にしました。兵庫県条例の有害物質の確認と、この有害物質に今後放射性物質を加えることを検討しているかどうかです。

その後、資料2の回答を得ました。
要点は、「放射性物質の安全性や取り扱いについては、科学的根拠を踏まえた慎重な議論が必要」「土壌における取り扱いについては、放射性物質汚染対処特別措置法などにより国において適切な対応がされる必要」の2点です。

「慎重な議論が必要」との回答を得られたことは重要ですが、この段階ではまだ国の特措法の出方を見てという方針でした。


丸尾まき議員の県議会での質疑
その後、資料3の追加の質問をしましたが、まったく返答はありませんでした。そのような折り、放射性物質の拡散には非常に懸念されている丸尾まき県会議員が、12月の一般質問で井戸県知事に、環境省の汚染土壌再利用政策について兵庫県の見解を質問されました。(資料4)

2019年12月10日当日、私も丸尾まき県議の一般質問ということで、兵庫県議会の傍聴に行きました。その時の質疑を要約します。

井戸知事は、まだ環境省による実証実験の結果がでていないとしながらも、放射性汚染水と同様に、土壌についても 放射性物質の取り扱いについては、科学的根拠を踏まえながら、安全性や風評被害なども考慮し、慎重な議論が必要との見解。
丸尾議員が、昨今の大雨などによる堤防決壊、土砂流出を見ると、実証実験の結果は意味が無いことは明らかなので、慎重な取り扱いをと述べているとき、井戸知事はうなずきながら聞いていました。

「汚染水と同じく汚染土も慎重に」との井戸知事の発言を直に聞けたことと、井戸知事のうなづき(資料4の動画では分からない)が見られて、傍聴に行ってよかったと思いました。


そして、これから
年が明けて1月8日。環境省は、ほとんど誰も気がつかないような形で、汚染土再利用のパブリックコメントを始めました。私が知ったのも1月21日でした。締め切りは2月7日。おそらく環境省はどれほど反対意見が寄せられようと、4月1日にこの省令変更を施行するでしょう。

この環境省の汚染土再利用計画を知ったのは2016年。それからずっと私なりにこの問題のために動いてきました。まずは多くの人に知ってもらわないとと思い、講演会や学習会などのイベントを行い、また機会があるごとに、マスコミ関係者や自治体議員や国会議員候補者の皆さんに説明をしてきました。しかし、なぜかこの汚染土再利用計画は、マスコミにも取り上げられることはほとんどなく、今でもほとんどの人が知らないままに、再利用という放射能拡散が始まろうとしています。

これほど私たちの暮らす環境に影響を及ぼすものが、なぜ大きなニュースにならないのか、不思議で仕方ありませんが、いよいよ4月1日には施行されるかもしれない。施行されても諦めることなく、私は注意喚起、対策の実施を訴えかけていきます。

その第1段として、緊急シンポジウムを企画しています。
まずは兵庫県から止めるということで、兵庫県下の関係者に登壇してもらい、皆で考える機会にしたいと思っています。


仮題:ホームスイートひょうご♡
地方自治体から再利用を止めて、
私たちの暮らしと未来をまもるための緊急シンポジウム
日時:2020年3月21日(土)14:00ー16:30 (開場13:30)
会場:神戸市勤労会館405/406号室(定員120名)
主催:さよなら原発神戸アクション
パネラー:兵庫県の農業従事者、兵庫県の消費者グループ、陳情活動グループ、自治体議員などを予定
提言者&コーディネーター:
小橋かおる(さよなら原発神戸アクション・共同世話人)


また、3月下旬には、丸尾まき県議の紹介で、兵庫県の関係職員との懇談も予定しています。シンポジウムで得られた意見などを懇談に活かしたいと思っています。


この問題は、全員が当事者です。兵庫県から放射性物質の拡散を止める手法が全国に広がれば、環境省の省令変更は効力を失います。放射性物質は公害物質です。今でも原発構内では100ベクレル/kg以上のものは低レベル放射性廃棄物として厳重保管なものを、兵庫県であろうと、福島県であろうと、ずさんに扱ってはなりません。子どもたちのいる環境にそのような公害物質を拡散することはあってはなりません。

私たちの暮らしと未来を守るために、この公害物質である放射性物質、放射性汚染土、放射性汚染水、そして放射性廃棄物の厳重管理を求めます。
どうぞ全国各地で行動を起こしてください。



資料一覧
1.**** 兵庫県 さわやか提案箱への質問 ****

兵庫県の埋め立て事業や公共事業に使われる土砂についてお伺いします。

下記の報道をご存じでしょうか?
■除染土再利用に前向きな考え
NHK 福島WEB NEWS 2019年08月22日
https://www3.nhk.or.jp/lnews/fukushima/20190822/6050006613.html
「国は福島第一原発の事故に伴う除染で出た土を全国で再利用する計画ですが、各地で反発が相次ぎ、飯舘村の長泥地区だけで実証実験が進められています。 」


環境省は、放射性物質汚染対処特措法(特措法)に基づいて行われた除染作業で生じた福島県内の「除去土壌=放射性汚染土」のうち、セシウムで8,000ベクレル/kg以下の放射性汚染土を、農地や公共事業で再利用する方針とする省令案を2016年頃から提示しています。

本来ならば、再利用のクリアランスレベル100ベクレル/kg以上の放射性物質は、低レベル放射性物質として厳重保管されるべきところを、80倍の基準で、全国の公共事業で再利用するとの案です。

以上を踏まえて、質問をさせていただきます。

1.現在の兵庫県の埋め立てなどの土砂にたいする安全基準は、兵庫県の 「産業廃棄物等の不適正な処理の防止に関する条例」に基づき、「土壌汚染対策法」の定める26種類の有害物質の基準、及びダイオキシン類の土壌環境基準との理解でよろしいでしょうか?

2.上記の安全基準に放射性物質が含まれていない場合、新たに有害物質として放射性物質を追加する必要があると思われますか?

3.放射性物質を有害物質とする場合は、安全基準はどのようにお考えですか?

4.放射性物質を有害物質としない場合は、その理由をご説明ください。


以上について、ご回答をよろしくお願いいたします。
小橋かおる 兵庫県神戸市在住 9月25日13:45送信
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2. **** 兵庫県からの返答 ****
このたび「さわやか提案箱」にお送りいただいたメールについて、知事に代わり、知事室長の私からお返事を差し上げます。

1 本県の土壌の安全基準について
   本県の「産業廃棄物等の不適正な処理の防止に関する条例」に基づく 土壌安全基準は、「産業廃棄物等の不適正な処理の防止に関する条例施行 規則」別表第1に規定する27物質です。詳細については別添一覧表のと おりです。(See attached file: 別表第1.pdf)

2 放射性物質の追加の必要性について
   放射性物質の安全性や取り扱いについては、科学的根拠を踏まえた慎重な議論が必要です。
   このため、まずは国において放射性物質の安全性等の科学的根拠を明確にすることが必要であり、土壌における取り扱いについては、放射性物質汚染対処特別措置法などにより国において適切な対応がされる必要があるものと考えております。

 詳細については、下記にお問い合わせ下さい。

■農政環境部環境管理局環境整備課廃棄物適正処理班
  TEL  078-341-7711(内線3354)
  E-mail kankyouseibika@pref.hyogo.lg.jp
    令和元年10月9日             小橋 かおる 様

                     兵 庫 県 知 事 室 長
                       仲 井 敬 司
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3. **** 上記を受けてのさらなる質問 ****
 農政環境部環境管理局環境整備課廃棄物適正処理班 御中

日々、兵庫県の環境保全のためのお努めありがとうございます。
先日、兵 庫 県 知 事 室 長  仲 井 敬 司 様より、お返事をいただきました。
改めて、放射性物質の追加について、質問させていただきます。


「2 放射性物質の追加の必要性について
   放射性物質の安全性や取り扱いについては、科学的根拠を踏まえた慎 重な議論が必要です。  このため、まずは国において放射性物質の安全性等の科学的根拠を明 確にすることが必要であり、土壌における取り扱いについては、放射性 物質汚染対処特別措置法などにより国において適切な対応がされる必要 があるものと考えております。」


 ご指摘のとおり、国において放射性物質の安全性等の科学的根拠を明確にすることが必要であるのは当然のことながら、国は十分な根拠も示さず、これまでのクリアランスレベル100ベクレル/kgの80倍の基準である8000ベクレル/kg未満ならば、汚染土壌を再生資材として、全国の公共事業で使用可としようとしています。

ただしその測定方法は、これまでのクリアランス制度によるクリアランス(放射性物質としての管理を外す)確認方法ほど確立されたものは今のところなく、このままでは、1万ベクレル/kg超えという放射性同位元素で放射線管理区域で扱わなければならない可能性のある土壌が「再生資材」と称して、河川の防潮堤や道路工事、農地の造成に使用されるかもしれません。

また、たとえ8000ベクレル/kg未満であろうとも、これまでの100ベクレルという基準からすれば、とうてい科学的に安全が確認されているとは言いがたいものだと思います。井戸知事におかれましては、以前にも震災瓦礫の受け入れについて、「100ベクレル/kg未満のものならば」と基準を設定されていましたし、現在問題になっている汚染水の大阪湾への放流という大阪市長の発言にも、たいへん慎重な姿勢を取られているので、この点のご認識はしっかりしたものをお持ちだと思います。

福島第一原発事故以前は、放射性物質が環境に散在する事態など想定されていませんでしたが、事故後は、人体に悪影響を及ぼす放射性物質が環境中に存在する事態となったことから、2013年に、環境基本法、大気汚染防止法、水質汚濁防止法などの放射性物質適用除外規定は削除され、放射性物質は公害物質となりました。しかし具体的な公害法の改正は、大気汚染防止法と水質汚濁防止法の常時監視と公表制度の改正にとどまり、環境基準も規制基準も定めていません。土壌汚染対策法を始め他の公害・環境法令は未整備のまま放置されています。

公害物質である放射性汚染土から、兵庫県の土壌、農地、海、そして県民の健康を守るために、兵庫県から国に法整備の必要性を要望する、または、兵庫県独自に条例を整備する必要があると思います。


これまでのクリアランス制度と、放射性物質汚染対処特別措置法による放射性汚染土の再利用の二重基準を、県としてどのようにお考えなのか、ご回答いただけたら幸いです。

2019年10月15日
小橋かおる(兵庫県神戸市在住)
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4.**** 丸尾まき県議の放射性汚染土についての県議会での質疑 ****
【動画】兵庫県議会令和元年12月定例会本会議 
(12月10日一般質問 丸尾牧 (無所属) )
https://www.youtube.com/watch?v=M5UTEBJcMT4

兵庫県庁


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