2011/09/29
『チェルノブイリハート』-命の存在すべてをかけた訴えを受けとめて-
原発事故がもたらす被害の実態を描いたドキュメンタリー映画『チェルノブイリハート』を見た。チェルノブイリ事故による放射能汚染地域では、甲状腺がんを発症する子どもだけでなく、心臓障害、脳性まひ、四肢障害、精神障害・・・さまざまな障害を抱えた子どもたちが生まれている。その中に、イラクやアフガニスタンでも多く見受けられたような、体から大きくはみ出したようなひどい腫瘍、見るに耐えない奇形の子どもたちもいた。
脊髄損傷と脳性まひの4歳の少女は、枯れ木のように細い体をエビのように反りかえしてベッドの上に横たわっていた。ただ小刻みに震えながら、小鹿のような大きな瞳を見開いて。息をするだけでも苦しそうだ。しかし、彼女は大きな瞳で大人を、そして世界を見つめている。この世に生まれてくるよりも、流れてしまったほうがきっと楽だったに違いないのに、彼女は懸命に生き抜いて、私たちに彼女の存在を訴えている。
スクリーンに映る、その琥珀色の瞳に見つめられながら、私はハッと気がついた。この子は、私たちに知らせるために、生まれてきてくれたのだと。イラクでもアフガンでも、そしてチェルノブイリでも、あれほどたいへんな姿で、あれほどの苦しみを抱えてでも、子どもたちが生まれてきてくれたのは、放射能が人類にとってどれほど危険であるかということを私たちに知らせるためだったのだと。
その訴えに気づくことなく、私たち大人は福島の地でまた原発事故を起こしてしまった。大量の放射能を飛散させてしまった。「電気がいる」「経済が大切だ」「安全保障だ」とのたわいない声に惑わされて、子どもたちが、命の存在すべてをかけて訴えてくれていたことに、今の今まで真の意味では気がついていなかったのだと思い知った。
今からでも遅くはない。もうこれ以上、危険な放射能生み出す核を、いかなる理由においても利用しようなどと思ってはいけない。人は私を非科学的と呼ぶだろうか。文明の進歩に逆行する者と呼ぶだろうか。それでもかまわない。どうか、あの子どもたちから目をそらさないでほしい。子どもたちを隠さないでほしい。命のすべてをかけての訴えを、全身全霊で受け止めてほしい。
「チェルノブイリ・ハート」
http://www.gocinema.jp/c-heart/
付記:放射能と先天性異常児について、『チェルノブイリ・ハート』(マリアン・デリオ著 合同出版)の解説に書かれた、崎山比早子氏(元放射線医学総合研究所主任研究員・高木学校)言葉をご紹介します。
「『チェルノブイリ・ハート』の映像はとてもショッキングでにわかには信じがたい事実を見るものに突き付けてくる。特に先天異常(奇形)児を映し出した場面はそうである。医師たちの証言によると、事故前と比較して異常児の出産が増加していることは明らかだ。とはいっても疑い深い習性を持つ研究者たちは、事故との、あるいは放射線被曝との「因果関係を示す数字の裏付けがない」と文句をつけることだろう。ベトナムの枯れ葉剤、水俣病など今では因果関係が明らかになった被害でも、それが確証されるまでにはかなりの時間を要し、その間に犠牲者を増やしてしまったという苦い経験を、私たちは持っている。」(p.90)
私たちは科学者のお墨付きの世界に生きているわけではありません。私たちは愛する家族とともに健康に暮らし、その幸せを子や孫たちに受け継いでもらうために、自然の恵みに育まれて生きているのです。それを守るために、自分の目、耳、手、あらゆる能力を使って、本質を見極め、自ら判断していかなくてはならないと思います。
原発事故がもたらす被害の実態を描いたドキュメンタリー映画『チェルノブイリハート』を見た。チェルノブイリ事故による放射能汚染地域では、甲状腺がんを発症する子どもだけでなく、心臓障害、脳性まひ、四肢障害、精神障害・・・さまざまな障害を抱えた子どもたちが生まれている。その中に、イラクやアフガニスタンでも多く見受けられたような、体から大きくはみ出したようなひどい腫瘍、見るに耐えない奇形の子どもたちもいた。
脊髄損傷と脳性まひの4歳の少女は、枯れ木のように細い体をエビのように反りかえしてベッドの上に横たわっていた。ただ小刻みに震えながら、小鹿のような大きな瞳を見開いて。息をするだけでも苦しそうだ。しかし、彼女は大きな瞳で大人を、そして世界を見つめている。この世に生まれてくるよりも、流れてしまったほうがきっと楽だったに違いないのに、彼女は懸命に生き抜いて、私たちに彼女の存在を訴えている。
スクリーンに映る、その琥珀色の瞳に見つめられながら、私はハッと気がついた。この子は、私たちに知らせるために、生まれてきてくれたのだと。イラクでもアフガンでも、そしてチェルノブイリでも、あれほどたいへんな姿で、あれほどの苦しみを抱えてでも、子どもたちが生まれてきてくれたのは、放射能が人類にとってどれほど危険であるかということを私たちに知らせるためだったのだと。
その訴えに気づくことなく、私たち大人は福島の地でまた原発事故を起こしてしまった。大量の放射能を飛散させてしまった。「電気がいる」「経済が大切だ」「安全保障だ」とのたわいない声に惑わされて、子どもたちが、命の存在すべてをかけて訴えてくれていたことに、今の今まで真の意味では気がついていなかったのだと思い知った。
今からでも遅くはない。もうこれ以上、危険な放射能生み出す核を、いかなる理由においても利用しようなどと思ってはいけない。人は私を非科学的と呼ぶだろうか。文明の進歩に逆行する者と呼ぶだろうか。それでもかまわない。どうか、あの子どもたちから目をそらさないでほしい。子どもたちを隠さないでほしい。命のすべてをかけての訴えを、全身全霊で受け止めてほしい。
「チェルノブイリ・ハート」
http://www.gocinema.jp/c-heart/
付記:放射能と先天性異常児について、『チェルノブイリ・ハート』(マリアン・デリオ著 合同出版)の解説に書かれた、崎山比早子氏(元放射線医学総合研究所主任研究員・高木学校)言葉をご紹介します。
「『チェルノブイリ・ハート』の映像はとてもショッキングでにわかには信じがたい事実を見るものに突き付けてくる。特に先天異常(奇形)児を映し出した場面はそうである。医師たちの証言によると、事故前と比較して異常児の出産が増加していることは明らかだ。とはいっても疑い深い習性を持つ研究者たちは、事故との、あるいは放射線被曝との「因果関係を示す数字の裏付けがない」と文句をつけることだろう。ベトナムの枯れ葉剤、水俣病など今では因果関係が明らかになった被害でも、それが確証されるまでにはかなりの時間を要し、その間に犠牲者を増やしてしまったという苦い経験を、私たちは持っている。」(p.90)
私たちは科学者のお墨付きの世界に生きているわけではありません。私たちは愛する家族とともに健康に暮らし、その幸せを子や孫たちに受け継いでもらうために、自然の恵みに育まれて生きているのです。それを守るために、自分の目、耳、手、あらゆる能力を使って、本質を見極め、自ら判断していかなくてはならないと思います。
2011/09/14
児玉龍彦東京大学教授・8月12日プレスクラブでの会見から
インターネットで児玉龍彦氏(東京大学先端科学技術研究センター教授・アイソトープ総合センター長)の会見を見ました。なんとしても子どもと妊婦を放射能から守りたいと言う、人として当然の思いに突き動かされた、誠意のこもった会見でした。ひとりでも多くの人に児玉氏の声を届けたいと思い、私の心に残った氏の発言をここにまとめさせていただきます。
■内部被曝が遺伝子を傷つけるメカニズム~シミュレーションの必要性
・ゲノムから見るガン化のメカニズム
今のゲノム科学で見ると、(放射線により)DNAの切断が起こると一定の率で、パリンドローム変異(染色体の7番が3つになる現象)が起こり、それが原因となって遺伝子が活性化される。それに続いてレット遺伝子が活性化され、さらにそれから10年、20年と経つと、もう一個の遺伝子が変異してガン化するというメカニズムが、かなり決定論的なメカニズムとして分かるようになってきている。
・人間への放射線の内部被曝の影響例:α線のトロトラストによる肝障害
ドイツや日本で使われてきたトロトラストという造影剤によるいわゆる薬害により、放射線の影響が明らかになった。それによると、α線により、第一段階でP53という遺伝子を保護する遺伝子がやられ、その後ドイツ人でも、日本人でも、最初にトロトラストを使ってα線障害によって実際にガン化が起こるには20年の年月がかかるということが分かった。
・シミュレーションの必要性
今までの低線量被爆の議論の中で、疫学とか統計学から見て厳密な証拠が必要だという議論があるが、それらはひとつの経過が終った後に、そこから見て原因を探るという学問的作業だ。19世紀、20世紀的な昔の考え方と、今日、ヒトゲノムが解読され、スーパーコンピュータによる予想科学が登場してからは、状況は一変している。
福島原発事故後、この21世紀に生きている我々には、仮定から起こるいろいろな障害や事態をシミュレーションとするということをもっと積極的に行って、この事態に対処するということが非常に大事だ。
筆者注:低線量被曝による人体への影響を科学的に解明してくださっている大変貴重な発言だと思いましたので、一番に紹介させてもらいましたが、ただ、だからと言ってすべての人が20年後にガンになるということではないと思います。ヒロシマを生き延びられた肥田舜太郎医師は、体の中に入ってしまった放射能を医師としてはなんともできないが、各自が免疫力を高め、健康を維持することはできるとおっしゃっていました。事実を受け取め、できるだけの対策を取ることが重要だと思います。
参考ブログ:肥田舜太郎氏講演会「あなたがあなたの体の主人公」
■セシウムによる健康障害の予防の必要性
チェルノブイリの汚染地域で、尿中に6ベクレル/リットルぐらいのセシウムが検出される地域では、かなりの人が増殖性の膀胱炎になり、非常に多数に、早期の膀胱ガンが発生するということが、国立日本バイオアッセイ研究センターの福島昭治所長によって、報告されている。
また、日本においては、厚生労働省の研究班が5月18日から6月3日にかけて行った検査で、すでに福島市、二本松市、相馬市の7名から1.9~13.1ベクレル/リットルのセシウムが検出されているということが報告されている。
これらのレベルから見ると、セシウムによる健康障害を予防していくということは、待ったなしの課題である。
筆者注:今後福島県が大々的に行おうとしている県民の健康管理調査ですが、その先行調査として、大量被曝が懸念される飯館村などの住民を対象に尿検査が行われたそうです。そして、注目すべきは、その尿検査のND値=検出限界値が、13ベクレル/リットルだというのです。これでは13ベクレル未満の値は未検知となってしまい、対策が打てないでしょう。上記のチェルノブイリ汚染地域における健康障害の例を見ると、ND値は少なくとも6ベクレル/リットルにすべきではないでしょうか?
■子供と妊婦を守るため、立場を越えて結集を!
** 児玉先生の発言をそのままご紹介します **
私は30年来、放射線取扱者としてやってまいりまして、1965年からは第一種放射線取扱主任として規制する側に回っております。
私どもがやっております規制は、科学技術庁の平成12年告示によって、妊娠可能な女子の被曝は1ミリシーベルト以下、女性医師で妊娠可能な女子の腹部での線量でさえ、2ミリシーベルト/年以下、というふうに決められています。
ところが福島原発の事故が起こってから行われている議論で、このような子供と妊婦を守るという議論が、まったく行われておりません。
私は、日本の国土というのは、子供と妊婦を最優先しなければいけないという責務を、科学者も、政治家も、経済人も、マスコミの方も、すべからく負っていると思います。
今は、さまざな意見の違いを超えて、日本国民が総力を挙げて、この子供と妊婦が安心できる日本の国土を創り上げるために、力を挙げるときだと思っております。
** **
以上、児玉氏の発言をご紹介いたしましたが、最後に、長年「原発はいらない」と訴えてこられた京都大学原子炉実験所助教の小出裕章氏がお好きと言われる、宮沢賢治の言葉をご紹介します。
「世界ぜんたいが幸福にならないうちは個人の幸福はありえない」
「個性の優れる方面において、各々止むなき表現をなせ」
私はゲノムも予想科学も放射能もまったく解さない人間ですが、自分の心に届いた声を伝えるということぐらいはできると思うので、それに尽力したいと思います。
参考サイト一覧
**児玉先生の言葉を直にお聞きください。
児玉龍彦教授の8月12日の会見
動画:http://www.videonews.com/press-club/0804/002020.php
文字おこし:http://kaleido11.blog111.fc2.com/blog-entry-782.html
**福島県の県民健康管理調査について
続報・尿からセシウムが検出された子供たちのその後
http://www.videonews.com/special-report/031040/002055.php
**シミュレーションのための重要データ(SPEEDI)
福島第一原発事故に伴うセシウム137の大気降下状況の試算 http://nsed.jaea.go.jp/fukushima/data/20110906.pdf
2011/09/12
「さよなら原発9・11神戸アクション」
晴天の空のもと、神戸・メリケンパークのステージ上に白いティーピーが聳え立った。
「さよなら原発」
東日本大震災からちょうど半年となるこの日、日本各地で脱原発を求める声が結集し、さまざまイベントが開催された。
神戸では、「さよなら原発神戸アクション」主催で、自民党の河野太郎さんらのスピーチや、ライブなどとともに、ブースでは今後の原発の問題、またエネルギーの問題などについてのミーティングももたれた。
4時からは、神戸の繁華街をめぐるパレード。
夜はキャンドル・ナイトと、多彩な催しで、一日中、エネルギーの問題、生き方、暮らし方、世の中との繋がり方を考えたり、話し合ったり、感じたりできる場となった。
私も「7世代に思いをはせて」としてブースを持たせてもらった。
私なりに見える世界を表現したアクリル画の展示に加え、放射能のこと、原発のこと、7世代に思いをはせた生き方・・・、これまで拙メールマガジン「7世代に思いをはせて」で紹介させてもらった書籍を中心に展示し、訪れた方たちと話し合える場を作らせてもらった。
1日かけて、多くの方と話した。というよりも、多くの方が私に何かを伝えにきてくれたと言ったほうがいいかもしれない。お知らせとか情報のことではない。深い心の底から湧き出てくるような思い。魂が求めているような生き方。ありのままに見た世界。それぞれの方の経験や表現方法は違うけれども、何か深いところでは同一のものを、あの場にいた私に伝えに来てくれたような気がしてならない。
昨日9月11日は、アメリカ同時多発テロからちょうど10年の日。私にとっては生き方も生活も一変してしまった日でもある。この日をこのような人々とのつながりの中で過ごせたことに、深く感謝した。
写真上:ティーピーの前でのライブ。歌っているのは矢谷トモヨシさんとまどかちゃん
写真中:パレード
写真下:「7世代に思いをはせて」ブースの様子
2011/09/05
「一万年の旅路」チャリティ朗読会
9月4日。台風12号の影響が残る重苦しい空の下、六甲の麓、八幡神社に隣接する会場に50名近くの「この物語を聞く用意のある耳を持つ」人々が集った。ろうそくの火を囲み、いにしえの人々が残してくれた知恵と勇気にあふれる言葉を耳を澄まして聞いた。
物語の後、集ったひとりひとりが「生きる」ということについて語った。ひとりが語っている間、他は発言せず、ただ耳を澄ますという「節度ある話し合いの方法」に従って。多くの人が、3月11日以降、世界を見る目が、自分の中の価値観が変ったと語った。そしてこれまでの知識や常識が通用しない世界の到来を予感し、ある人はその世界に希望を感じ、ある人は不安を、そして自分の中にある感覚に従うことの大切さを語った。
私自身、これからどのような事態が起こり、どのような世界がもたらされるのかわからない。ただ自分の選択に責任を持ちたいと思う。そして何世代も後の子孫にこのように誇ってもらえたらと願う。
「そして、その選択を悔いたものは少なかった。なぜなら、彼らの道は厳しく、前進は困難だったものの、最後には新しい道を見つけたからだ。
そう、われらはそのとき北をめざした者たちの子。われらは<海辺の渡り>を見ることを選んだ者たちの子。われらは<古の知恵>とともに歩み、彼女の物語に耳を傾けることを選んだ者たちの子。」
『1万年の旅路』p.17より
-大地震と大津波の後、大海を渡って新天地を目指すべく北に進んだ先人を讃える言葉 -
後々まで子孫を残す道は、核の力に頼って電力を起こすことでも、武器をつくることでもなく、地下資源を掘り起こし、使い果たすことではないはず。厳しい道であろうとも、私たちには未来の子孫のために選ばねばならない<海辺の渡り>がある。そしてそれを渡る仲間がいるということを、深く感じた集いだった。
お礼:
足元の悪い中ご参加くださった皆様、ほんとうにありがとうございました。おひとりおひとりにとっての「生き方」を聞かせていただきましたことは、私にとりましてもとても貴重な体験となりました。また、会場でお預かりいたしました募金は、63、750円にもなりました。このすべてをアフガニスタンとイラクの子どもたちのために活動するNGO(33、750円)と福島の子どもたちのための「こどものたべもの」基金(30、000円)に寄付させていただきます。例年の「花と爆弾」からの寄付にあわせて9月下旬に寄付をいたしますので、後日当ブログにおいてもご報告させていただきます。
最後になりましたが、語り手の鹿島さゆりさん、会場を提供してくださったサラ・シャンティの清水ご夫妻、また受付やチラシ配りなどでお手伝いしてくださった皆様にも深く感謝いたしております。
参考:主な寄付先
日本イラク医療ネットワーク(イラクの白血病の子どもたちのためのNGO)
ペシャワール会(アフガニスタンに水路を建設する中村医師を支える会)
「こどものたべもの」基金(福島県二本松市の市民放射能測定所を支える基金)