2024/05/04

 

PFOA(発がん性物質)ラプソディな1年でした

 

出典:ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議


PFAS(ピーファス)の一種、

PFOA(ピーフォア)って、ご存じですか?

「はあ?」「アルファベットで言われてもなぁ。」

「なんか、聞いたころあるかも、米軍基地周辺の問題?」


私も昨年(2023年)の4月までは、そんな感じでとらえていました。4月10日にNHKの『クローズアップ現代』で放送された~追跡“PFAS汚染” 暮らしに迫る化学物質~を見るまでは。


そこで一瞬だけ紹介されたPFAS汚染全国マップの画面を見て、これまで沖縄と関東の米軍基地の問題だと思っていたのに、関西の淀川あたりが飛び抜けて汚染され、そして、ポツンと離れて、神戸市西区を流れる明石川も非常に高い値で汚染されていることを、初めて知りました。


「なにこれ!?」

もっと調べなくてはと思い、開いたNHKのサイト

“PFAS汚染”全国マップ 指針値超え地点 すべて掲載



そこにあったのは、「PFOS PFOA 河川、湖、海域」汚染ランキング3位に明石川、11位に同じく神戸市内を流れる伊川。そして、「地下水」汚染ランキングでは、桁違いの値で、大阪市と摂津市が1位、2位。


驚愕しました。他所で問題になっている汚染物質によって、自身が住んでいる地域がもっともっと汚染されていたとは・・・。どうなってるんだ?何で私は知らないんだ?


それからネットで調べに調べ、大阪の汚染は「ダイキン」淀川製作所が、長年PFOAを排出し続けていることが原因であろうと知りました。このダイキン由来のPFOA汚染問題は、Tansaが何年も追跡していたので、後追いで知ることができました。(ぜひ、ダイキンPFOA追跡のシリーズ「公害 PFOA」をご覧ください。)


では?明石川は?汚染源は工場?そんな大きな工場もないけど?

これまでも放射能汚染土拡散防止など、環境を守るために力を貸してくれた丸尾まき兵庫県議や、神戸市西区選出の香川市議らに、その明石川のPFAS汚染のことを伝えました。


そして、すぐさま動いて独自調査を進めてくれた丸尾県議のおかげで、だんだんと被害の実態や、汚染源がわかってきました。


■発がん性指摘の有機フッ素化合物、明石川流域の住民から検出 

9人中6人が基準値越え 京大名誉教授らが発表

神戸新聞NEXT 2023/9/21

https://www.kobe-np.co.jp/news/society/202309/0016836485.shtml


■発がん性指摘の化合物 神戸・西区の明石川13カ所で「基準」超え 

京大名誉教授「産廃処理場影響か」

神戸新聞NEXT 2023/11/8

https://www.kobe-np.co.jp/news/society/202311/0017007661.shtml

「今回の調査は10月中旬、流域の25カ所で実施した。

西区押部谷町のうち2カ所では10万ナノグラムと210ナノグラムを検出し、

それぞれ近くに産廃処理場が存在しているという。」



汚染源はわかってきましたし、2023年末には、PFOAがそれまでの「発がん性指摘」から、「発がん性物質」と国際基準が変わり、危険性もより明らかになりましたが、それからがなかなか進みません。

神戸市は問題と思われる産廃業者などに協力の要請をしていますが、昨年の『クローズアップ現代』放送時には、「明石川 上流 460ナノグラム」の発表だったものが、今年2月の値は、神戸市の発表では1300ナノグラムとなり、状況はまったく改善されず(むしろ、悪化!?)。


明石川の水を水道水に使っている明石市は、浄水用の活性炭の交換頻度を高めるなどして、水道水のPFAS濃度を1リットルあたり5~10ナノグラムに抑えて対応していますが、明石川の周辺の土壌汚染や海水の汚染、それによる魚介類の汚染などを考えると、汚染源の一日も早い特定、除去が必須です。(ちなみに淀川水系の阪神水道を使っている神戸の水道水は、だいたい10~15ナノグラム/L前後です。これも改善しなくてはなりません。後述)



そして、これは明石川だけの問題ではなく、日本全国、特にPFASを製造していた工場、または多量に使用していた工場の周辺、そして近隣地域の産廃処分場で、同じようなことが起こる、起きていると思われる問題です。



しかし、日本政府の動きは遅いです。

欧米各国はPFASへの規制を強化する一方、日本政府は飲料水の指標値案を、従来と変わらない1リットルあたり50ナノグラムと考えられる数値を、今年2月に提示してきました。1ヶ月間のパブリックコメント募集期間を経て、現在検討中ということになっていますが、汚染源対策の遅々とした動きを見ていると、この国の政府は、国民の健康や環境を守ることに関心がないのだろうか?と思えます。


このパブリックコメントが終わった1ヶ月後、アメリカ環境保護局(EPA)が、水道水への新たなPFAS規制値を発表しました。大切なところを抜粋引用します。


***

EPAによると、新たな規制は、体内に蓄積して多くの健康問題を引き起こすことが知られている6種類のPFASから、1億人もの米国人を守ることにつながるという。PFASとの関連が指摘される健康問題には、腎臓がんや精巣がん、妊娠高血圧症候群、早産、肝臓および免疫系の疾患が含まれる。

なかでも毒性の強いPFOSとPFOAは基準値を1リットルあたり4ナノグラムとした。

(この規制により膨大なコストがかかっても)それでも多くの専門家は、PFASに関連する健康問題を示す「証拠の重み」を考えれば、新たな基準値は理にかなっていると主張する。

「これだけ低い濃度でも、長い年月の間には大きな影響を及ぼすことがあります。化学物質が体内で生物濃縮を起こすからです」

***



日本政府も同じ対策がとれるのではないでしょうか?

いえ、私たち有権者は、政府をそのように動かさなければならないのではないでしょうか?


まずは、PFASの人体への危険性をEPA並に認識し、水道水の基準を強化する、そして汚染源を見つけて、撤去、浄化する。


私はこれまで放射能汚染の問題に取り組んできました。放射能は半減期を待つしか「浄化」の方法はありませんが、PFASは1100度で熱分解が可能で、すでに分解処分も進んでいます(一例)。また、他にも安価な分解方法についての研究が進んでいて、期待されています。


本気になれば、この発がん性物質を私たちの環境から取り除き、環境と未来を守ることができるのです。


日本政府には、米国の新規制値を取り入れ、汚染源の撤去、分解処分のために、一刻も早く動くことを要望していきたいと思います。


明石川の汚染を止めるためには、政府を動かさなければならないと強く思う、1年後の5月です。



***引用サイト***

■飲み水のPFASに米国初の規制、1億人守る新基準にのしかかる負担

National Geographic 2024/4/17

https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/24/041600213/



++ オススメサイト ++


若きジャーナリストが問題を追ってくれています。

Yumihiko Yokoyama〝未来世代へのメモ〟


■PFAS汚染を追って〜明石川流域、10万ngという“脅威値”  2024/4/17

https://note.com/yumi0415/n/n462afdc3145c

(丸尾県議の調査や、私たちが企画した集会のことも紹介。

集会には、地方自治体議員を始め、阿部知子衆議院議員も参加。)


■PFAS汚染を追って〜どうなる!?使用済み活性炭、食品など新たな対策 2024/4/9

https://note.com/yumi0415/n/n8ddb8043c69f

(日本全国のPFAS汚染のこと、汚染源のこと、食品のこと、PFAS問題を網羅。)



拙ブログ「7世代に思いをはせて」でも、この1年随時書いてきたPFAS問題。

時系列でリンクします。だんだん視点がグローバルになっているのに気づきます。


■【第780号】あなたの水は大丈夫ですか?

https://nanasedai.blogspot.com/2023/09/780.html


■【第782号】もっと早く知っていれば・・・

https://nanasedai.blogspot.com/2023/10/782.html


■【第787号】PFAS汚染源を探して・・・ 

https://nanasedai.blogspot.com/2023/11/787pfas.html


■【第801号】PFASから見る「ビジネスと人権」

https://nanasedai.blogspot.com/2024/02/801pfas.html


■【第803号】「健康への権利」とわたし

https://nanasedai.blogspot.com/2024/03/803.html


■【第810号】アメリカからの朗報に思うこと 

https://nanasedai.blogspot.com/2024/04/810.html


拙ブログWords for Peaceでは、50ナノグラム/Lの問題点を説明し、パブコメ書いて!と訴えました。

■ PFAS:時代遅れの食品健康影響の指標値案を改善するためにパブコメを送りましょう!

https://flowersandbombs.blogspot.com/2024/02/


PFOAを追うことになった原点の明石川
丸尾県議撮影



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