2026/08/12

 

国連報告書「永遠の化学物質(PFAS)と人権」から考える日本への提言

 有害物質及び廃棄物に関する特別報告者が、「永遠の化学物質(PFAS)と人権」と題する報告書を9月の国連人権理事会に提出します。報告書は76日付で国連のサイトにて公表されており、世界に向けて早急な脱PFASとPFASの適切な管理と汚染被害の救済を求める内容となっていますので、ぜひAI翻訳などを使ってでも全文を読むことを薦めます。以下は、小橋が重要と思う点を抜粋引用(緑字は小橋による日本語訳)しながらの報告書の解説と、そこから小橋が考える日本への提言です。 

                                


1 報告書から見る世界の潮流

 

まずは、サマリー(概要)を読みます。この報告書において特別報告者は

PFASが、いかにして人権の十全な享受を阻害しているかを検証する。自然界に類似物質が存在しないこれらの極めて残留性の高い化学物質が、生命を支える生態系の化学組成を不可逆的に変化させ、人類および環境の健康を阻害する潜在的リスクを有していることを考察する。そして、PFASが人権と環境に対して甚大な脅威をもたらしていると結論づけ、その結果として、PFASのすべての非必需用途を直ちに禁止するとともに、PFASを効果的に管理し汚染を防止するために、あらゆるレベルで緊急の行動をとる必要がある」とします。

 

すなわち、特別報告者は、環境ばかりでなく人権を脅かすPFASの危険性を指摘し、その非必需用途の即時禁止を求め、さらに、汚染防止と管理強化のため、あらゆるレベルでの緊急行動が必要であると結論づけたのです。

 

報告書では、多様な事例の考察が続きますが、その勧告を読んでみましょう。

特に、日本の状況に関係する勧告を抜粋します。

 

パラグラフ97 特別報告者は、各国に対し、以下のことを推奨する。

(a) PFASのすべての非必需用途を直ちに禁止し、一括規制(クラス規制)の対象としてPFASを効果的に管理し、段階的に廃止するための包括的な国内法、規制、政策、計画を遅滞なく採択すること。これには、PFASの生産、市場への投入、製品や産業プロセスでの使用、環境への排出、ならびに水、大気、土壌、食品中への存在を規制することが含まれる。

 

(b) PFASによる「犠牲地域(サクリファイス・ゾーン)」で生じている人権侵害を終わらせるために直ちに行動を起こすこと。具体的には、PFAS曝露の被害者に対する医学的モニタリングと治療の提供、PFAS製造施設の段階的廃止、PFAS汚染の管理、および汚染された場所の浄化を行うこと。

 

(c) 深刻なPFAS汚染に曝露された個人、労働者、地域社会に対し、司法へのアクセスと効果的な救済(補償や環境の回復を含む)を保障し、差止命令、一時的な操業停止、緊急支援といった暫定的な保護措置が利用可能であることを確保すること。

 

また上記の施策としての勧告が続きます。

 

(e) PFASへの対処において、既存のあらゆる国連の枠組みを最大限に活用すること。これには、PFASを含む廃棄物への対応を含め、バーゼル条約、ロッテルダム条約、ストックホルム条約など、すでにPFASを規制している国際的な枠組みをさらに強化し、効果的に実施することが含まれる。

 

(m) 「汚染者負担の原則」を適用し、PFAS汚染に責任のある企業が、環境浄化にかかる全費用と、飲料・衛生・その他の用途のための清潔で安全な水の供給にかかる費用を負担するようにすること。

 

(n) PFAS製造施設の段階的廃止によって悪影響を受ける可能性のある労働者や地域社会を支援するための、「公正な移行(ジャスト・トランジション)」の戦略を策定すること。

 

注:犠牲地域

「特定の産業の利益(利益を得るのは主に大企業や先進国の豊かな人々)のために、特定の地域やそこに住む住民(主に低所得層、マイノリティ、先住民など)の健康や環境が『文字通りいけにえ(犠牲)に捧げられ、見捨てられている地域』」 環境と人権に関する特別報告者プレスリリースより

 


日本におけるPFAS汚染の主要な汚染源としては、軍事基地、産廃処分場や製造工場などを稼働する企業などが挙げられますが、企業に対する勧告は以下のとおりです。

 

パラグラフ99 特別報告者は、金融機関を含む企業に対し、以下のことを勧告する。

(a) PFASまたはPFAS製造技術を製造、使用、または流通させるプロジェクトへの融資を回避すること。

(b) PFAS関連のリスクから安全な職場環境を確保すること。

(c) PFASに関する社内調査の結果を全面的に公表すること。

(d) 消火用泡消火剤などのPFAS製品について、回収の仕組みを構築すること。

(e) 安全な非PFAS代替品の開発に資源を配分すること。

 

 

以上勧告のみの紹介ですが、さまざまな事例をもとに構成されたこの報告書は、世界のPFAS規制と「脱PFAS」の潮流を決定的に加速させ、後退を許さないレベルにまで前進させると推測できます。なぜなら、これまでは単なる「環境基準値の議論(数値の管理)」であったPFAS問題が、健康、安全な飲料水、清潔な環境、そして司法へのアクセスといった「人権」を直接侵害するものとして再定義され、報告書が「金融機関はPFAS関連プロジェクトへの融資を避けるべき」と明記したことのインパクトは大きいからです。

 

今後は、PFOSPFOAのみならず、包括的PFASについて、その製造、放出や不適切な管理が、「国際人権法に基づく明白な人権侵害の証拠」となり、企業にとっては、環境基準のクリアだけでなく「人権デューデリジェンス」を怠ったという巨大な法的・財務的リスク(賠償金や巨額の浄化費用)となります。それにより、投資家や銀行は、深刻なリスクとしてPFASの製造や、それを大量に使用する企業からの投資引き揚げ(ダイベストメント)を始め、企業は生き残りのために「脱PFAS」を余儀なくされることになりえるのです。

 

 

2 報告書から考える日本政府への提言

 

報告書では、日本政府が提出した情報の飲料水のPFASの水質基準についても触れられていますが、それは、日本の規制の遅れを環境的不正義における格差を示す例としたものでした。

 

パラグラフ75:以下の例は、規制の違いを示している。米国は、飲料水中のPFOAおよびPFOSについて、最大汚染物質濃度を1リットルあたり4ナノグラム(ng/L)と定めている。(中略)日本は2020年に50 ng/Lという暫定指針値を設定し、2026年にはこれを恒久的な水質基準へと移行させた。この基準値は、米国やスウェーデンが設定している基準値の12倍以上高いものである。

 

パラグラフ7677では、沖縄の米軍基地周辺の甚大なPFASによる水質汚染への言及と、フランスでのPFAS規制(飲料水中の総PFAS濃度について、100 ng/Lという基準値の設定と、化粧品、繊維製品、およびスキーワックスへのPFASの使用を禁止する国内法)が紹介され、この環境的格差についての懸念が述べられるのが、次のパラグラフです。

 

パラグラフ78:こうした規制のバラつきは、事実上、環境的不正義における格差を生み出している。すなわち、ある国の住民は、別の国の住民に比べて、安全な水への基本的人権が十分に保護されないという格差である。人類は皆、同じ生物学的性質を共有しているにもかかわらず、居住地によって健康や環境の保護水準に違いが生じている。

 

 

日本の行政は、食品安全委員会のPFASリスク評価書の中で繰り返された、PFASの発がん性などの有害性を示す研究について「結果に一貫性がなく証拠は限定的である」「関連については判断するための証拠は不十分である」という文言に依拠して、現行の水道水の基準値を設定した訳ですが、上記の環境的不正義の格差是正のために、その再考は避けられないものではないでしょうか?

 

食品安全委員会のPFASリスク評価を紹介する英文サイトでは、この評価の参考文献として、20年前の研究が掲載されています。疫学調査を含む最新の科学的知見を取り入れてのリスク評価のやり直しを、日本国民のひとりとして、強く求めます。

その上で、早急な水道水のPFAS規制の基準値の強化、またPFASの環境への排出、ならびに水、大気、土壌、食品中のPFASについての規制基準の設定、PFAS汚染被害地での住民の血液検査など、特別報告者の勧告に沿った施策を求めます。

 

 

3 報告書から考える日本企業への提言

 

企業活動によるPFAS汚染について報告書より抜粋します。

 

パラグラフ34PFAS以外の革新的な非PFAS技術やその他の社会的配慮よりもPFAS技術を優先する政策は、一部の企業の経済的利益には寄与するものの、社会や汚染の負担を強いられる人々には不利益をもたらしている。PFAS生産の大部分は12社のメーカーが担っており51、それによる世界的な利益は推定40億ドルに上る。一方で、欧州だけでも医療費は年間推定520億~840億ユーロ、水質浄化費用は2,380億ユーロに達し、さらにPFASに汚染された17,000カ所の浄化費用も必要となる。

 

注:参考文献51に挙げられている世界主要PFAS製造企業12

3M(米国)AGC株式会社(日本)Archroma(スイス)Arkema(フランス)BASF(ドイツ)Bayer(ドイツ)Chemours(米国)ダイキン工業株式会社(日本)Dongyue Group(東岳集団)(中国)Honeywell(米国)Merck(ドイツ)Solvay(ベルギー)

 

 

パラグラフ36:この分野における人権保護を考える上で、確立された環境法の原則は極めて重要だ。被害の外部化という問題は、直ちに「汚染者負担の原則」を想起させる。特定のPFASがもたらすリスクを企業が認識していながら沈黙を決め込んだり、あるいは誤った情報を流布させたりしたという事実は、「科学を享受する権利」や「環境被害の防止原則」に関わる問題だ。多くのPFASについて毒性を示す証拠が存在すること、そしてすべてのPFASが極めて高い残留性を持つことから、PFASという化学物質群全体を適切に管理するために、「防止原則」や「予防原則」を適用する必要がある。PFASをめぐる意思決定において露呈した「組織的な無責任さ」に直面する今、これらの原則は、説明責任がいかに極めて重要かを浮き彫りにしている。 

 

パラグラフ84:スウェーデンのロンネビーで起きた画期的な訴訟は、近隣のスウェーデン空軍基地で使用された消火剤に含まれるPFASに汚染された飲料水が、自治体関連企業であるMiljöteknik社を通じて地域社会に供給された問題をめぐるものだった。2023年、スウェーデン最高裁判所は、血中の高濃度PFASは「人身傷害」に該当し、汚染水は同国の製造物責任法における「欠陥製品」であるとする、先例となる判決を下した。同裁判所は、「血中の高濃度PFASによって現れる著しい身体的変調」は、たとえ特定の疾患と診断されていなくても、不法行為法上の賠償対象となる傷害そのものであると判断した。

この判決は、より包括的な(広範囲にわたる)『害・損害』の法的定義を認めるものであり、世界中のPFAS健康被害訴訟に重大な影響(あるいは波及効果)を与える可能性がある。

 

以上、企業利益のためにPFAS技術を優先することの環境と人権への甚大なる弊害と、その被害の賠償についての汚染者負担の原則、そして「血中のPFAS高濃度」が傷害として賠償対象となり、広範な被害者救済の可能性を高める判決例です。

 

ここから読み取れることは、

PFAS規制について、産業界からは「EVや半導体などのグリーン技術に不可欠だ」「代替品がない」という強い反発(ロビー活動)が続いているようですが、この報告書はそれらを「人権侵害を正当化する理由にはならない」と一蹴しています。

企業は「規制されるから代替品を探す」という受動的な姿勢から、「PFASを使い続けること自体が企業生命を絶つリスクになる」という認識への転換が必要です。

 

日本の多くの企業は「日本の環境省の基準値(暫定目標値)を守っていれば安全だ」と考えているようですが、世界市場(特に欧州・米国)や国連の基準はそれを遥かに超えるスピードで動いているのです。「法的に禁止されるからやめる」のではなく、「PFASを使い続けることは、人権侵害への加担とみなされ、ブランド価値と市場を失う最大のリスクである」という潮流の変化を認識する時です。

 

 

PFAS製造企業・ダイキン工業への提言

 

小橋は関西に在住していることから、ダイキン工業淀川製作所の近隣住民によるPFAS汚染公害調停に注目しています。 

上記の「世界主要PFAS製造企業12社」にも社名が上がるダイキン工業は、企業への勧告のaの「融資の回避」すなわち世界的ダイベストメントの対象として、報告書において名指しされたのも同然です。

また、勧告のcでは、「PFASに関する社内調査の結果を全面的に公表すること」が求められています。ダイキンは、淀川製作所での長年のPFOA製造やその後の代替PFASの製造量や環境への排出量を情報開示していません。公害調停の申し立てに応じるまでもなく、即時の開示が求められます。 

ダイキン工業は「国内の法基準は守っている」「科学的因果関係は未確定」という姿勢を国内向けには崩していませんが、ダイキン工業が「PFASと人権」報告書を深刻に受け止め、グローバル企業として、責任ある行動をとることを期待します。

 

 

最後に

 日本では、他国と比べても深刻なPFAS汚染にも関わらず、その危険性の認識が共有されていませんが、この報告書は、PFASの汚染が単なる環境問題にとどまらず、健康、安全な飲料水、清潔な環境、そして司法へのアクセスといった人権を直接侵害していると指摘しています。PFAS製造企業のみならず、あらゆる企業は、PFASを人権問題として受け止め、勧告と「ビジネスと人権」指導原則に則った対応が迫られています。また、日本政府もこれまでのPFAS問題解決への後ろ向きな姿勢を改め、勧告内容を実現するためのあらゆる法整備に早急に取り組む必要があると理解するときです。

 

関連文献:

■「ビジネスと人権」から考える企業由来のPFAS汚染:汚染事業者の責任とは?

小橋かおる(有害物質に関する人権擁護者)

「日本の科学者」(20266月号)PFAS汚染問題への科学者と市民の共同Part 2

https://www.jstage.jst.go.jp/browse/jjsci/61/6/_contents/-char/ja 


参考文献51に挙げられている世界主要PFAS製造企業12


 

 


2026/07/25

 

黒を灰色にする過程:『灰色の鎖 PFAS汚染列島』読書メモ

 


 諸永裕司著『灰色の鎖 PFAS汚染列島』(文藝春秋)を読みました。全国に広がる有機フッ素化合物(PFAS)のひどい汚染の実態と、それを隠蔽・放置する構造的な闇を追及したノンフィクション。欧米と比較した日本の厳しい規制の遅れをもたらす、健康被害に対する無責任な政府・行政を、岡山県吉備中央町や食品安全委員会周辺の取材を基に明らかにした書でした。

350ページを超える書ですので、私的なメモとして、もっとも腑に落ちた点を挙げておこうと思います。(引用箇所は緑字)

 

1 環境省は、なぜ血液検査に消極的なのか?

被害が顕在化すると対応を迫られるから。

 環境省の本音 環境基本法によれば、「公害」は次のように定義されている。

<公害とは、大気の汚染、水質の汚濁、土壌の汚染、騒音、振動、地盤の沈下及び悪臭によって、人の健康または生活環境に係る被害が生ずることをいう>

 この条文にPFAS汚染を当てはめれば、すでに公害にほかならない。健康被害が明らかになれば、さすがに国も「公害」と認めざるをえなくなる。そうなれば、問題は岡山の小さな町にとどまらず、国が対応を迫られ、責任は政治にも及びかねない。

 それだけに、被害が顕在化するきっかけになりかねない汚染地域の血液検査は、環境省にとってアキレス腱とも言えるものだった。pp.77-78

 

環境省が血液検査を推進しない言い訳と、彼らが言わない血液検査のメリット

環境省の言い訳(血液検査のデメリット)「血中濃度を調べても、健康状況を把握することはできません。」

環境省の言わない血液検査のメリット(環境省も参考にしている全米科学アカデミー)のガイダンスより) 

・曝露量は下がっていくと知ることができる

・地域が汚染に対応する後押しになる

・曝露量を知らないことによるストレスから解放される

PFAS曝露による潜在的な健康リスクへの予防的措置がとれる

・曝露提言に向けた対策の有効性を確かめることができる (p.85

 

2 なぜ食品安全委員会が自らPFAS評価に乗り出したのか?

米国環境保護庁(EPA)がPFASの「事実上ゼロ」の規制強化に向かうことを知り、日本がそれに追従して規制を強化しないですむ言い訳を作るため。

 日本がEPAに引きずられないためには、「事実上ゼロ」へ向かうEPAの代わりとなる算出根拠が必要だった、と考えても矛盾はない。

 そして、それを示すことができるのは、省庁から独立して中立公正なリスク評価を行う機関を謳う食品安全委員会しかなかったのだろう。p.220

 

3 どのように食品安全委員会のPFASリスク評価は欧米よりけた違いにゆるくなったのか?

PFASの危険性を示す重要論文を審査から外し、時間がないと問題を見送った

 最終的にPFASリスク>評価書に載った論文のリストを見てみると、鯉渕<最初の論文選定に関わった研究者>が取り上げるべきとする論文が除外され、取り上げるべきではないとした論文が追加されている。<中略>じつに全体の7割がさしかえられているのだ。p.262

 食品安全委員会はこの<EPAの>手法にもとづく独自の計算モデルを作ることも、EPAのモデルを援用することも見送った。

「今回は時間がなかったんで、(独自モデルを確立する)検討はしていないってことですね。」評価が歪められた理由は、独自の計算モデルを確立する「時間がなかった」からというのだ。きわめて重大な<中山祥嗣PFASワーキンググループ座長代理の>告白だった。p.272

 世界のコンセンサスとまで言われた「出生体重の低下」が、時間がないことを理由に見送られなければ「耐用一日摂取量」はより小さくなり、飲み水の目標値が引き下げられたことは間違いない。p.274

 

4 環境省の目的達成 

耐用一日摂取量20ng/kgなら、飲料水規制値は50ng/LOK

 それこそが環境省の狙いだった、とPFAS対策にかかわった政府関係者は言う。

「全国のほとんどの浄水所で50ナノグラムを下回っているから、もう飲み水は安全だ。そいうメッセージを発することで、なんとか世論を鎮めたいと考えていたのです」p.278

 

 

5 PFASリスク評価書を歪めてまで、国民の健康より優先されたものは?

コストと経済への影響

 第1の理由はコストだろう。(中略)目標値が下がれば、活性炭などの除去費用がかさみ、全国の浄水場で対策が必要になる。

 第2の理由は、経済への影響だろう。経済産業省は当時、半導体産業の育成を積極的に進めていた。p.219

 

最後に、食品安全委員会との面談に同行した高橋雅恵氏(徹底した調査で論文差し替えを明らかにした人物)の言葉を引用したい。

 「本当にひどいですね、あの人たち」

 「国から選ばれた科学者って、何なんでしょう?正直、これほどいい加減だとは思いませんでした。私たちが信じてきた『安全』って、もしかしたら底が抜けているのかもしれませんね」p.299

 

 以上が『灰色の鎖 PFAS汚染列島』からの抜粋メモです。(私的なメモ代わりに書きましたので、わかりにくいところも多いかと思いますが、ぜひ原書をお読みください。)

欧米ではPFASの健康への影響は灰色ではなく、黒。実際、PFOAはアスベストやダイオキシンと同レベルの発がん性物質に分類されています。それを灰色にして、私たちと次世代の健康と環境を踏みにじる・・・。この国の基本姿勢を変える時が来ていると思います。

 

最後に、著者の諸永裕司氏の最新記事を紹介します。 

■「ダイキンがPFAS汚染で負担すべきコストは168億円」と研究者が試算。

「国内法のゆるさを利用している」

SlowNews 2026724日 https://slownews.com/n/n390a9c1c9d93

「野口准教授は、代表的な多国籍企業のひとつであるダイキンの振る舞いがあまりにも国際基準からかけ離れているため、国際社会に知らせようと考え、論文は英語で書いたという。」

 

ダイキン工業も、私たちの健康と環境をPFASで汚染し、利益を上げている企業です。このような姿勢は、もう21世紀のグローバル企業として許されるものではないことを、日本の企業も政府も真剣に受け入れる時です。

 

 

PFASの健康への影響
出典:ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議


2026/04/14

 

日米安保条約を改めて読んでみました

 国連憲章や国際法を顧みず、米・イスラエルによるイラン攻撃やホルムズ海峡を米軍も封鎖するなど、トランプ米大統領の「思いつき」によって、戦地では多くの命が失われ、また世界が原油不足に陥れられ、暮らしや命が脅かされています。

 

それらの軍事作戦に、日本の米軍基地から米艦船などが出撃する・・・すなわち日本の国土が、国際法違反の疑われる、そして日本の防衛とは関係のないことに使われていることを、日本国民として情けなく思っていたときに、日本と同じく第二次世界大戦の敗戦国のイタリアのニュースを読みました。 

イタリア、中東に向かう米軍機の着陸を拒否 「事前の要請なかった」(朝日新聞 2026/3/31)

 

事前の要請がなかった」

そう言えば、日米安保条約の地位協定にも、「事前協議」という言葉があったな、と思い出し、改めて外務省の日米安保条約のサイトにアクセスしました。

 

外務省:日米安全保障条約(主要規定の解説)より、以下抜粋。

1

 国連憲章は、加盟国が従うべき行動原則として、「その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない」(第24)としており、加盟国は、自衛権の行使に当たる場合や国連安全保障理事会による所要の決定がある場合等国連憲章により認められる場合を除くほか、武力の行使を禁じられている。1条の規定は、この国連憲章の武力不行使の原則を改めて確認し、日米安保条約が純粋に防衛的性格のものであることを宣明している

 

第6条 米軍による施設・区域の(特に戦闘作戦行動のための)使用に関して

我が国の領域内にある米軍が、我が国の意思に反して一方的な行動をとることがないよう、米国政府が日本政府に事前に協議することを義務づけたものである。

我が国から行なわれる戦闘作戦行動のための基地としての日本国内の施設・区域の使用

 

10

 この条文は、日米安保条約は、当初の10年の有効期間(固定期間)が経過した後は、日米いずれか一方の意思により、1年間の予告で廃棄できる旨規定。

                                                 抜粋以上

 

今回特に関係するところは、第6条の「我が国から行なわれる戦闘作戦行動のための基地としての日本国内の施設・区域の使用」についての事前協議です。

 

イラン攻撃やホルムズ海峡封鎖という国際法に違反すると考えられる軍事作戦に、事前協議もなく在日米軍基地が使われています。イタリアのように日本政府も、この軍事作戦に参加した艦船の基地への帰還を許可しないということもできるではないでしょうか?

 

そもそも日米安保条約が純粋に防衛的性格のものであることを考えると、事前協議とかの問題ではなく、最初から、イラン攻撃に在日米軍基地を使わせてはならないのではないでしょうか?

 

特にホルムズ海峡の米軍による封鎖に在日米軍基地が使われたら、日本は自分の首を絞めるために基地を提供しているようなものでしょう。このような米軍基地の使われ方は、日本の主権侵害的な問題の多い日米安保条約下においてでさえも、あまりにも逸脱していませんか?

 

日米安保条約を今すぐ破棄せよとは言いません。しかし、日本の国益を守るために、このような使われ方には異議を唱えるのが、主権国として当然ではありませんか?

 

 

最後に、この日米安保条約は、日米いずれか一方の意思により、1年間の予告で廃棄できるような条約です。気まぐれのトランプ米大統領によって、一方的に破棄もできる代物です。(そして、基地内のPFASやダイオキシンやその他さまざまな有害物質はそのままで出ていかれても文句も言えない条約です。)

 

ほんとうにこのままでいいのか?

この多極化する世界で、米国一辺倒ではなく、主権国として本気になって日本の選択肢を考えなければならないのだと思います。



    「私たちの主権を尊重せよ!」のバナーです。

  軍事力による覇権に突き進む米国に、世界中で示す必要があるのではないでしょうか?

 

 

後記:私は安全保障の専門家ではありませんが、日本の有権者として、日米安保条約を読みかえし、素直に解釈してみました。


2026/03/18

 

日本の選択肢プランB@布施祐仁講演会

 315日、「沖縄・西日本各地で進む戦争準備と神戸港の役割」と題したジャーナリストの布施祐仁さんの講演を聞きました。講演の大部分は、米軍の思惑に沿って軍備や体制を整えていく日本の軍拡、すなわち、ほとんどの国民が気が付かないうちに、日本列島がミサイル発射の要塞と化し自衛隊が米軍と一体化し、核も持ち込まれようとしているという、日米軍事一体化の現状でしたが、この状況から脱却するためのプランBについて、布施さんのお話をまとめてみたいと思います。

 

日本のように、今からどれだけ軍拡しても中国や米国と言った軍事大国に追いつくことはできない小国の選択肢はふたつ、すなわちプランAB

 

プランAは、大国と同盟関係を結び他国からの攻撃を防ぐこと。現在の日米同盟です。このメリットと引き換えに、日本は、米国にコントロールされる状態に甘んじなければならず、また、米国の戦争に巻き込まれます(日本が戦闘に加わらなくても、日本の意志とは関係なく、在日米軍基地は戦争に使われています)。

 

プランBは、外交、相互依存関係で戦争が起きないようにする。すなわち「力による支配」ではなく、「法の支配」と信頼関係の重視です。

 

こう言うと、「外交で解決するはずがない」とか、「中国に支配されたいのか?」と、ネット上ではものすごい批判がくるのですが(と、布施さんも苦笑いしながら話されていましたが)、実のところ、プランBを採用している小国の方が多数派です。

 

例えば、ASEAN諸国(東南アジア諸国連合)です*。ASEANは、ベトナム戦争終了後、いち早く冷戦思考(プランA)から脱却し、「東西対立の最前線」から、「平和共存の発信源」へと歩んでいます。

 

もともとは、反共軍事同盟として発足したのですが、ベトナム戦争終結の70年代後半から、政治体制の異なるベトナムやラオスとも共に地域経済の発展をめざす、経済協力機構に変質し、今に至るのです。

 

中国との対話による予防外交は、1988年の南シナ海のスプラトリー諸島で中国とベトナムが武力衝突して以降、1990年、インドネシアが「南シナ海の潜在的紛争の制御に関するワークショップ」を開始、1991年、ASEAN・中国間の対話開始と続き、2026年までの37年間、武力衝突は起きていません。

 

「でも、ここまで大国となった中国、これからは違うだろう?」という意見もあるでしょう。もちろん、中国を信頼しろとは言いません。中国に対話路線を続けさせるのですと、布施さんは強調しました。

 

世界は激変しています。20世紀のようにG7が世界の経済の大半を握っていた世界から、今やグローバル・サウスと呼ばれる新興・途上国が世界GDP40%以上を占める世界になっています。中国の輸出相手国のトップもASEAN諸国です。

 

2021年に開かれた「中国ASEAN対話関係樹立30周年記念サミット」で、習近平国家主席はこう演説しました。

「今後の中国ASEAN関係について提案をしたい。第一、共に平和な故郷を築く。平和がなければ、何事も話にならない。平和はわれわれの最大の共通利益で、各国人民の最も大きい共通の願いでもある。」

 

アメリカか中国か、という20世紀的なパワーポリティックス的発想から脱却し、多極化する世界への対応が必要です。

 

世界の多極化は、無秩序な世界という可能性もありますが、小国が連携して大国をコントロールし平和を保つという可能性もあります。

 

そして、この多極化する世界が示す現実は、米国の国力の低下です。

日本は、このまま日米同盟の元「主権なき」ミサイル発射台のような状態のまま(プランA)、国力の低下した米国に翻弄されるのか、それとも小国の連携に加わるのか(プランB)?

 

プランBを目指しませんか?との布施さんのお話でした。

 

現在の中東の混乱を引き起こしたトランプ政権の無謀さと無責任さを見ると、ほんとうに日本は岐路に立っていると深く考えさせられる講演でした。

 

 

*注:ASEANについては、外務省のサイトから補足説明します。

1967年の「バンコク宣言」によって設立されました。原加盟国はインドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイの5か国で、その後ブルネイ、ベトナム、ラオス、ミャンマー、カンボジア、東ティモールが加盟し、現在は11か国で構成されています。2015年に共同体の設立を宣言したASEANは、順調に経済発展を遂げ、今や、世界の成長センターとして注目されています。

 

追記 1

外交によるプランBが日本の現実的選択であろう、もうひとつの理由も触れられていたので追記します。

〇日本の自衛隊は戦えるような組織ではない。

なぜなら、慢性的に人員不足で、特に実際に動く兵士クラスは6割ほどの人員しか確保できていない。通常、2割の不足で作戦は実行できないとされているので、4割不足は話にならない状態。それをAIなどによる無人化やアウトソーシング(医療、運輸、建設)でなんとか穴埋めしようと画策しているのが現状。

でも、そのアウトソーシングしようとしている分野って、今、日常生活でも人手不足で困っている分野ですよね?

 

追記2:「主権なき国家」日本の軍事要塞化の詳細については、布施さんのご著書をお読みください。

単著:布施祐仁『従属の代償 日米軍事一体化の真実』講談社現代新書、講談社、2024

共著:伊勢崎賢治・布施祐仁『主権なき平和国家―地位協定の国際比較からみる日本の姿』集英社クリエイティブ、2017


参加した講演会のチラシ


 

 

 


2025/08/07

 

『人を動かすナラティブ なぜ、あの「語り」に惑わされるのか』を読んで

 7月の参院選で、最も衝撃を受けたことは、多くの人が「日本人ファースト」というフレーズに熱狂し、それにまつわる誤情報を信じたことが、投票行動によってあらわされたことでした。

 どうしてそのようなことになるのだろう?難民や移民を標的にするような現象は、アメリカやヨーロッパでも起きてきましたが、日本でも、参院選で繰り返されたことに悶々とする中、偶然一冊の書を手にしました。

『人を動かすナラティブ なぜ、あの「語り」に惑わされるのか』大治朋子著 毎日新聞出版 2023年刊 

様々な専門家へのインタビューを通して、多くのことを気づかせてくれた書籍でしたが、その中から、少しご紹介させていただきます。(緑字は引用文です。) 


 ナラティブとは、「物語」や「語り」を意味する言葉ですが、

人間は事実やデータではなく物語の形式で考える。

人間はナラティブという形式で、世界を、そして自分や他者、世界を定義して生きている。」(p.6 

 とのことで、

「(そのように人間を動かす力のある)ナラティブと、その影響力を最大化、最適化するアルゴリズムを組み合わせた「情報兵器」による世界最大規模の人心操作の実態。それは現代社会にうごめく「見えざる手」ともいうべきものだった。」(p.7

 

詳しくは、本書を読んでほしいのですが、簡単に人心操作の流れを説明すると、

 

一握りのノード(政治から見捨てられていると思っている中年男性の層)にひとしずくのナラティブ(例えば外国人が悪い!みたいな言説)を垂らす→コアグループを中心にSNSで拡散既存メディアが取り上げる政治家が食いつくより公の場での議論となり、一般市民へと広がる

 

まるで血流にのるように社会全体に循環する。操作する側はただそれを眺めていればよい。」(p.184)とケンブリッジ・アナルティカ元研究部長。

ケンブリッジ・アナルティカは。2016年のトランプ大統領誕生の選挙で暗躍した企業ですが、もう、今では、上記のスキームで世論を操作することは、どこでも容易だとも書いてありました。

 

そして、「一握りのノード」の対象として、「政治から見捨てられていると思っている中年男性の層」が挙げられる理由のキーワードは、「パラノイア・ナショナリズム」です。

長くなりますが、引用します。 

『希望の分配メカニズムーパラノイア・ナショナリズム』(2008年)の著者のガッサン・ハージ氏によると

そもそも人間は「希望する主体」であり、社会は「希望」とそれを生み出す「機会」を作って人々に分配する、いわば「希望の分配システム」を担う。ところが経済のグローバル化に伴う規制緩和や格差の拡大、福祉政策の縮小などにより、各地で既存の分配システムが破綻。そこからはじき出され、「新たに周縁化」される人々を大量に生み出した。

 彼ら(パラノイア・ナショナリズムの人々)は、国家にもともと差別されてきた先住民族や移民・難民らとは異なり、希望を持てない環境に慣れていない。そこで国家との一体感が感じられるナショナリズムを「希望のパスポート」にしようと試みるという。そして母なる国家が、税金を使って移民・難民やシングルマザー、生活保護受給者といった既存の社会的弱者を守ろうとすると嫉妬し、敵視し、彼らは国家を食い潰す外敵だと訴えて国を「憂える」。

 そうすることで自分は国家に包摂されている、国家に必要な存在だ、自分たちこそ国家を管理しているのだ、という心理的な一体感を一方的に見出し、生きる希望に代えようとするのだという。(中略)そんな彼らは国家から希望の分配を拒否された「内なる難民」とも呼ぶべき存在だという。」(pp.54-55

 

ケンブリッジ・アナルティカは、こうした人々の不安や憎悪の感情を感染拠点に、保守系政治家の支持基盤の拡大などを図った。」(p.195

 

不安感情と密接に絡むのが陰謀論だろうとのことで、

虫明元東北大学大学院教授によると前頭前野の性質として、「不安の要素が加わってくると、右か左か白か黒かという形でさっさと結論を出したがる。結論はだいたい右か左の極論になってしまう」。しかも「不安が思考の最初にある人」は、どの情報が「不安をより取り除いてくれるか」という観点で見てしまいがちで、そこが結局「弱み」になってしまうという。」(p.282

 

 

人間は不安や怒りを覚えると、冷静に判断する余裕がなくなり、直情的、単純思考に走りやすくなるので、社会においては、そうした「内なる難民」を生みださないための格差是正、そして、個人においても心のバランスを保つ工夫や他者との関わり、コミュニティの再構築が大切との提言もありました。

 

最後に、本書を通して思ったことをまとめますと、私たち人間は、それぞれの物語を生きているようなので、その物語を誰かによって、気がつかないうちに書き換えられてしまわないように、いろいろと知っておくことが大切だということです。

 

 

本書では、人心操作の対象になりやすい人たちの属性、また、私たちの脳の処理機能とナラティブの関係、ナラティブの持つ力によるPTSDの克服、コミュニティの再構築など、様々な専門家とのインタビューを通して、具体的事例を列挙してくれていますので、ぜひご一読ください。





2025/07/21

 

PFAS「水質基準に引き上げ」で、神戸の水道水はどうなる?~水質試験所長と面談した市民の覚え書き~

 

水質試験所に集められた各地で採取された水



71日、環境省はPFOAPFOSについて、水道法上の「水質基準」に引き上げる省令を公布しました。施行は来年4月からで、全国の自治体や水道事業者には水質検査の実施や濃度が基準を超えた場合の改善が義務づけられます。また、現在の「PFHxS」に加え合計8つのPFASが「要検討項目」に位置づけられるとのことです。 

 




これを受けて、2点、確かめたいことがありました。

 

1 神戸市ではどのように対応が変わるのか、特にPFOSPFOAの合算値が基準値の50ng/Lを下回っているが40ng/Lのような「高い」値が検出された時には、どうなるのか?

 

2 要検討項目になる8つのPFASについての検査の方法や市民への情報提供方法は?

( 要検討項目になるPFAS群は、現在のPFHxSに加えて、PFBSPFBAPFPeAPFHxAPFHpAPFNAGenXの8つ)

 

 

そのような折、以前からPFAS問題に取り組んでいらっしゃる香川しんじ神戸市議の水質試験所見学に同行し、所長さんや職員さんと面談する機会を得ました。 

 

結論としては、

 

1 神戸市としては、自治体独自に策定できる水安全計画において、内部運用としてPFOSPFOAの管理基準値を合算で10ng/Lとし、その値を超える事態になったとき、低減措置をとることにしている。

 

2024年にアメリカで決まった規制値はPFOSPFOAそれぞれ4ng/Lで、それよりも少し高い管理基準値ですが、現在のところ、神戸市の水道水は、おおむね合算で5未満~8ng/Lなので、この水準を今後も維持することを神戸市としては目指していることがわかりました。

 

注)神戸市を水源とするものは10ng/L

阪神水道企業団から購入している水は15ng/Lが管理基準値となる説明でした。

現在のところ、どちらの水も、おおむね合算で5未満~8ng/Lです。

 

 

2 要検討項目となる8つのPFASについては、現在、測定の準備を進めていて、来年度からは現在水道局のHPPFHxSを公表しているような形で、情報提供していく。

 

注)こちらのサイトからPFOAPFOS合算値とPFHxSの値が確認できます。

■神戸市水道局 有機フッ素化合物の検査結果

https://kobe-wb.jp/suishitu/suidou-hozen/

 

 

 今回の説明で、初めて「水安全計画」の存在を知りましたが、このように自治体がそれぞれの実情に合わせて管理基準値を決めることができるのは、大切なことだと思いました。

 

関西では、PFOSに加えて、淀川のPFAS製造工場由来と思われるPFOA系の汚染を懸念しなくてはなりません。

PFOAは、もう製造はされていませんが、廃棄物やこれまでの排出による河川や土壌の汚染としての問題はまだまだ続きます。また、PFOA代替のPFHxAPFHpAPFNAが淀川から検出されていることを考えると、全く油断はできません。

 

注)こちらのサイトで淀川本川8地点における調査結果を確認できます。

■有機フッ素化合物(PFCs)の調査結果(令和5年度)大阪市

https://www.city.osaka.lg.jp/suido/cmsfiles/contents/0000499/499786/R5PFAS.pdf

 表1によると、PFCAs PFBAPFNAC4C9)が検出され、PFSAs PFBSPFHxS 及び PFOSC4C6C8)が検出されたことがわかります。

 

 

来年度からは、これらのPFOA系の値を確認し、推移を把握できるようになることは、関西ではとても重要なことですので、検査結果を注視していきたいと思っています。 

面談の後、実際にどのようにPFASの測定をするのか、試験所をめぐって説明をいただきました。 

実は私個人としては、神戸市の水質試験所の訪問は2回目で、1度目は原発事故発生時の水道水の安全確保についてご説明いただいたのですが、その時と同じ所長さんで、今回もとても丁寧に、市民に安全な水を供給できるようできる限りの体制を整えていることを説明してくださいました。

市民の不安に応える機会を作ってくださった、つなぐ神戸市会議団の香川市議、そして、水質試験所の所長さん始め職員の皆さんに、心から感謝いたします。

 

PFAS検査に使われる機器
(かなり高性能な機器とのことです)

 

= 関連サイト =

■「PFAS」来年4月から定期的な水質検査を義務づけへ 環境省

NHK NEWS WEB 202571

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250701/k10014849041000.html

 

■もしも若狭湾の原発のひとつでも事故を起こし、琵琶湖を放射能で汚染したら・・・ 神戸の飲料水はどうなる??~水質試験所の所長と面談した市民の覚え書き~

https://flowersandbombs.blogspot.com/2023/03/ 

原発事故発生時の水道水の安全確保について、ご説明をいただいときのブログです。


布引水源からの水で飼われているメダカ。
毒物が入れられるなど異変が起きた時にすぐさま感知できるように
カナリアの役目をしてくれているそうです。
高性能の機器からメダカまで、さまざまな方法で水の安全を確保してくれています。



2025/06/24

 

「ビジネスと人権」から考える「有害化学物質」PFAS汚染の解決法

 私の住む関西が、(ダイキン淀川製作所が主要な汚染源となって)、発がん性物質であるPFOAPFASの一種)にひどく汚染されていることに気がついた2023年から、その汚染の浄化やさらなる汚染の阻止を、どのようにすればできるのか、模索する日々が続いてきます。

 

この問題の解決のために、国も地方行政も、大手メディアも、ほぼ動かないなかで、一筋の光のように見えたのが、2023年に日本に調査にやってきた「ビジネスと人権」作業部会でした。「ビジネスと人権」とは、国連が定めた、企業活動と人権の関係についての人権尊重の責任を明確にするグローバルな枠組みで、調査官たちはダイキン淀川製作所のある摂津市の住民とも面談し、調査終了後の記者会見で以下のように述べました。

 

「不安を感じるステークホルダー(製作所周辺住民)は、地方自治体も政府も、水道水中のこれら永遠に残る化学物質(PFAS)の存在について、十分な対策を講じていないとして、水と土壌のサンプリング調査や健康に対する権利への影響に関するモニタリングを求めています」

「私たちとしては、UNGP(ビジネスと人権に関する指導原則)と汚染者負担の原則に従い、この問題に取り組む責任が事業者にあることを強調したいと思います」*1

 

 

この作業部会の動きを知って以来、調査で来日された作業部会のYeophantong氏のオンライン・セミナーなどに参加するようになりました。何度かダイキンによるPFAS汚染についても質問しましたが、そのたびに、

 

「人々の健康や人権、環境より利益を優先する企業が、今後国際的なサプライチェーンで生き残るのは難しい」と強調され*2、「ビジネスと人権」のアプローチが、関西のPFAS汚染の元を絶ち、また、日本社会に蔓延する「人々の健康や環境よりも企業利益」という古い価値観を変えることができるのではないかと思いました。 

 


 

今月、この「ビジネスと人権」を具体的にどのようにPFAS問題の解決に活用できるのかを考えるために、2冊ほど書籍を読みましたので、重要と思える部分をまとめておきます。

 

 以下、緑字は引用を表します。

 

『「ビジネスと人権」基本から実践まで』塚田智弘著 2024年刊 より

 

「国際的に認められた人権」と企業が及ぼす負の影響の例

 

・社会権規約第11条(本条は、相当な生活水準についての権利:相当な食糧、衣類および住居を含む相当な生活水準、ならびに生活条件の不断の改善についての権利を保障する。)

  ↓  

企業活動は、地域の給水の汚染や過度な使用により、水についての権利を人々が享受することを著しく妨げる場合、水についての権利に影響を及ぼすことになる。(p.39

 

・社会権規約第12条(健康についての権利:本条は、到達可能な最高水準の身体および精神の健康についての権利を保障している。)

  ↓

採取会社や化学会社など、その活動から汚染リスクが特に大きい部門の企業は、汚染が労働者および近隣コミュニティのメンバーの健康に関する権利に負の影響を及ぼさないことを確実にするために実施している方針および制度について、厳重な精査を常に受ける立場にある。(p.40)

 

 

このように、企業活動による環境破壊を通じて人権が脅かされることのないよう、その防止や軽減のための対応が求められているのです。

 

また、実際に生じてしまった負の影響については救済を提供していくものである点から、被害者はライツホルダー(正確な定義では、人権に負の影響を受ける<可能性のある>者)という語も用いられ、ステークホルダー(利害関係者)の中でも、特に重視されます。

 

では、その重視されるべきライツホルダーと企業はどうかかわるのでしょう?

それは、ステークホルダーエンゲージメントと呼ばれます。

 

 

以下、『「人」から考える「ビジネスと人権」』湯川雄介著 2024年刊 より

 

「ビジネスと人権」対応において、「一丁目一番地」ともいわれるのが、ステークホルダーエンゲージメント。すなわち

人権リスクの特定と評価、それへの対処の追跡調査、そして苦情処理メカニズムの過程において、ステークホルダーとの「有意義な協議」、「フィードバックの活用」、「情報提供」などが求められることが、その出発点。(p.271

 

企業の人権尊重責任は、企業活動による個人の人権への負の影響を予防、軽減、是正することです。そのためには、負の影響を受ける個人(ライツホルダー)本人の話を聞くことが一番確実ですし、それなくしては人権尊重責任を果たすための諸々の行為を適切に行うことはできないでしょう。(p.272)

 

そして、このプロセスは、必須であり、これを省略することは「あり得ない」ぐらいの意識が必要です。(p.274


「話すべき相手」についてよくある誤解(日本ではほとんど以下の様相と思われるので要注意です。)

対話が可能なライツホルダーや関連ステークホルダーがいるにもかかわらず、これらと話をせず、その地域のコミュニティの代表者(例えば村落の長)、現地の政府の担当者(例えば、労働問題を管轄する役所や、地方政府の担当者)と話したり、さらにひどい場合には自社が雇用している現地のコンサルタントに相談する「だけ」という場合があります。

これらの会話には意味がある場合ももちろんあるでしょう。しかし、地元のコミュニティや地方政府などは、ライツホルダーとの距離が遠かったり、投資誘致や税収や雇用の理由により、ステークホルダー本人よりも企業や地域、国の利益(最悪の場合は自身の利益)を優先して考えるなど、そもそもライツホルダーと利害が相反している場合も往々にしてあります。そのような懸念がある中で、たとえ工場がある村の村長や、中央政府の大臣が「工場では人権リスクは生じていない」と認めたとしても、ステークホルダーエンゲージメントの趣旨に照らして全く意味がないことは容易に理解できると思います。(p.282)

                           

以上、ダイキンのPFAS汚染問題の解決に重要と思えるコンセプトを紹介しました

 

 これに則ると、まずは、企業側は、ライツホルダーである周辺住民をはじめ、ステークホルダーに含まれる「人権擁護者」(住民のために正当に問題を提起する弁護士やNGO)との協議、対話、情報提供を持続的に続けていくことが出発点です。そこから是正、救済へと向かうプロセスを構築する。このステークホルダーエンゲージメントを行えない企業は、「ビジネスと人権」の指導原則から逸脱し、人権リスクを引き起こしている企業として、サプライチェーンから外されても不思議はないでしょう(例えば、A社がこのような企業と取引することは「直接関連する」負の影響となり、A社も対応を求められます。)

 

 「人々の健康や人権、環境より利益を優先する企業が、今後国際的なサプライチェーンで生き残るのは難しい」のです。

 

私たちステークホルダーは、この「ビジネスと人権」の指導原則と汚染者負担の原則に則って、PFAS汚染による環境破壊の防止、軽減、是正、そして救済を、汚染者である企業に求めていきましょう。

 

関連サイト 

*1 国連調査団「汚染者負担の原則に基づき、事業者が責任を」/

記者会見開きダイキンを牽制/国連人権委で報告へ

TANSA 「公害PFOA20230804

https://tansajp.org/investigativejournal/10148/

 

*2 東京へ、ジュネーブへ

7世代に思いをはせて第820号 2024629

https://nanasedai.blogspot.com/2024/06/820.html 

 

「ビジネスと人権」作業部会の2023年調査報告書や、指導原則など、有益な情報が掲載されているサイト

■ビジネスと人権 ヒューライツ大阪

https://www.hurights.or.jp/japan/aside/business-and-human-rights/


++ 付記 ++

2024年6月に人権理事会に提出された報告書より抜粋(筆者仮訳)

ビジネスと人権作業部会 報告書 パラグラフ6263

https://docs.un.org/en/A/HRC/56/55/Add.1

62. 作業部会は、東京、大阪、沖縄、神奈川、愛知で、パーフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物(PFAS)に汚染された水に関する複数の事例を聴取した。これらの事例は、事業活動に関連していると報告されている。作業部会は、以前に複数の特別手続き権限保有者によって強調されたように、PFASと健康への悪影響との関連性を指摘している。

環境省は20231月、科学的根拠に基づく包括的なPFAS対策を議論し、わかりやすい情報を発信することで国民の安全と安心に貢献するための専門家グループを設置した。

専門家グループはその後、政府が河川や地下水を継続的に監視し、血中濃度調査を含む一般的なヒトへの曝露評価を大規模に実施し、最新の科学的根拠に基づいて現在のPFAS暫定目標値を見直すことなどを求めるガイダンスを発表した。

これを受けて、環境省は、PFAS が人間の健康に及ぼす悪影響に関する科学的知識を高める計画を含む、健康への悪影響を防止し、PFAS の適切な管理を確実にするための政策を策定しました。ただし、この政策には、汚染地域の住民の PFAS 血中濃度に関する大規模な調査は含まれない。現在までに、ワーキング グループは、PFAS に汚染された水源の近くに住む人々の健康調査を行う政府の取り組みは限られていると理解している。

これは、学術研究で東京西部の住民が 4 つの有害な PFAS 化学物質にさらされていることが明らかになっているにもかかわらずだ。

 

63. ワーキング グループは、東京都が地下水調査の実施、一部の取水井戸の停止、ホットラインの設置など、前向きな措置を講じていることに注目している。もう一つの前向きな取り組みは、東京の私立病院が PFAS 相談クリニックを設立したことだ。それにもかかわらず、汚染されたすべての地域で PFAS 汚染とその健康への悪影響に対処するには、国レベルでの追加対策が必要だ。これらのケースの多くにおけるPFAS汚染は企業活動に関連しているとされていることから、作業部会は、指導原則と「汚染者負担」原則に基づき、この問題に対処する企業の責任を強調する。


日本政府への勧告 

(v) 水道水に含まれるPFASの存在とそれが人体に与える影響に対処する。これには、PFASの暫定目標値が最新の科学的証拠に基づき、環境基準に準拠していることを確保することが含まれる。

(g) 本報告書で特定された障壁を排除することにより、司法的および非司法的救済へのアクセスを改善し、ビジネス関連の人権侵害のすべての被害者に対する効果的な保護と支援を確保する。(ii)効果的な救済へのアクセスと企業の説明責任を促進するため、人権の促進及び保護のための国内機関の地位に関する原則(パリ原則)に沿って、強固かつ独立した国内人権機関を遅滞なく設立する。

企業への勧告 

(e) 事業活動に起因する水​​道水へのPFASの混入について責任を負い、指導原則および「汚染者負担」原則に基づき、問題に対処する。

(a) 指導原則に従い、運用レベルの苦情処理メカニズムを確立し、効果的な非司法的苦情処理メカニズムのすべての基準がジェンダーに配慮した方法で解釈されることを確保する。

(b) 個人及びコミュニティに生じた損害に対する効果的な救済措置を提供する。






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