2025/01/03

 

友だちを助けるための国際人権法と民主主義

 民主主義とは何だろう?

昨年の兵庫県知事選を県民として体験し、いろいろ考えた2ヶ月間でしたが、ふと図書館で手にした書籍が、大切なことを思い出させてくれたので、少し紹介します。


友だちを助けるための国際人権法入門」申惠丰著 影書房2020年刊


もしもあなたの友だちが、奨学金ローンに苦しむ学生だったら?性暴力を受けた女性だったら?難民申請中なのに入管施設に収容されたアフガニスタン人だったら?

具体的な事例を元に、国際人権の観点から、国際人権法を説明し、解決の可能性を説明してくれている本ですが、私が一番「そうだよね!」と気付かされたことは、

「友だちを助けるため」という視点です。



友だちの困りごとは、自分の困りごとではないことが多いでしょう。

それが、もしも多くの人が困っていることならば、社会問題としてメディアも頻繁に取り上げ、国会でも取り上げられ、選挙でも争点になって、解決策のための制度ができたり、法改正がされるかもしれないです。


でも、その問題で困っている人が少数だったら?

大多数の人たちは気がつかないまま? 

気がついても「関係ないし」?

今の制度が変わったら「めんどうだし」?


でも、友だちが困っていたら?

なんとかならないかな?と思いませんか?


民意を反映させる政治が民主主義ですが、多数決で決まってしまう民意の危うさを考えた時、多数決の「欠陥」を補い、民主主義を機能させるために大切な視点を思い出させてくれたのがこの本です。


小学校で習いましたよね?

「民主主義では、少数意見を大切にしよう。話し合おう。」って。


それは、少数の意見、少数の人たちの困りごと、少数の人たちが直面している問題でも、その人たちが自分らしく生きられない、能力を発揮できない状態になっていたら、その問題を取り除くために話し合って、皆で努力していこうということではないでしょうか?


それは、友だちへの「おもいやり」だけではなく、国や自治体に解決のために働きかけていくことではないでしょうか?

なぜなら国や自治体は、それを義務として国際人権法で求められているのですから。



人権:生まれてきた人間すべてに対して、その人が能力を発揮できるように、政府はそれを助ける義務がある。その助けを要求する権利が人権。人権は誰にでもある。

人権とは? (OHCHR: 国連人権高等弁務官事務所)



民意という、多数決や大きな声が牛耳ってしまいがちな民主主義の危うさを補うものが、「人権」なのだなぁと、改めてその大切さに気付きました。



日本ではあまり知られていなことですが、民主主義を機能させるために大切な「人権とは何か」を人々に知らせ、人権を守る役割も兼ねている「国内人権機関」や、人権が侵害されて、最高裁まで闘っても改善されない場合に救済を求めることのできる「個人通報制度」が、日本にはありません。(世界では120カ国以上が国内人権機関を有し、G7のうち日本を除くすべての国が、またOECD加盟国のほとんどが何らかの個人通報制度を導入しています。)


日本の私たちは、人権とは何かを教えられる機会もなく、人権が侵害されていても気がつかない状態にあり、気がついて声をあげた人がいても、何が問題なのか理解されず、よって世論に支えられることもなく、法改正も期待できず、裁判などでも救済されず、他の国々の住民のように国際法に救済を求めることもできない・・・。


国際水準の人権から大きく遅れた状況にある日本ですが、

まずは、自分の困りごとではないけれど、「友だちを助けるためにはどうしたらいいんだろう?そのために国際人権法があるんだ!」と教えてくれる書籍に出会えたことに感謝します。


学生向けに書かれた読みやすい本です。ぜひ、目次だけでもご覧ください。


「友だちを助けるための国際人権法入門」申惠丰著 2020年





~ 関連サイト ~


■日本に国家(国内)人権機関を

国際人権ひろば No.172(2023年11月発行号)

https://www.hurights.or.jp/archives/newsletter/section4/2023/11/post-201972.html


■個人通報制度の導入を目指して 

国際人権ひろば No.169(2023年05月発行号)

https://www.hurights.or.jp/archives/newsletter/section4/2023/05/post-201957.html



~ 関連ブログ ~


国際人権についての基本的理解をまとめました。

■『武器としての国際人権』を読んで・・「失われた30年」

Words for Peace 2023/1/03 

http://flowersandbombs.blogspot.com/2023/01/ 


コンピュータープロパガンダに操作させる民主主義の危うさについて。

■『操作される現実』を読んで

Words for Peace 2024/12/11 

https://flowersandbombs.blogspot.com/2024/12/



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