2019/06/09

 

ここまでわかった内部ひばく~セシウムボールのゆくえ~



2019年6月2日、放射能社会を生きる連続セミナー第10回「ここまでわかった内部ひばく~セシウムボールのゆくえ~」を、私が共同世話人を務めるさよなら原発神戸アクションで主催しました。講師には2013年の第1回セミナーと同様に郷地秀夫医師をお迎えし、6年前はわからないことだらけだった内部ひばくについて、「ここまでわかった」ことをお話しいただきました。最新の研究から得られた知見もわかりやすく説明してくださり、立ち見まででて会場にあふれる参加者の皆さんも、最後まで熱心に聞き入ってくださいました。
講演と質疑応答部分を録画し、公開しておりますので、ぜひご覧ください。
動画 ここまでわかった内部ひばく~セシウムボールのゆくえ~
https://www.youtube.com/watch?v=uQJ4Ne9UjMA&feature=youtu.be

とは言え、2時間に及ぶ動画ですので、このブログでも簡単に内容をご紹介してみようと思います。


セシウムボールとセシウムの違い

郷地秀夫医師
一言で言えば、純粋の(放射性)セシウムとは水溶性であり、セシウムボールとは、不溶性すなわち水に溶けないセシウムを多く含む微粒子です。セシウムは水に溶けるが故に、体内に取り込んでも、汗や尿として排出され1000日もすれば体内から検出されなくなる(生物的半減期の影響)と言われるもので(それでも十分被ばくの危険性はありますが)、一方、セシウムボールは、水に溶けない金属やセラミックのまざった微粒子であり、体内に取り込むと溶けることなく体内に沈着し、そこで局所的に強烈な放射線(ベータ線)を相当長い期間にわたって出し続けるということです。


これまでの研究室で扱うような「純粋な」セシウムではなく、原発事故によって発生した「不純物」のセシウムボール・・・これが今まで言われてきたような「生物的半減期」とは異なり、体内に留まり、長い年月をかけて細胞を被ばくする・・・このことを郷地先生は福島第一原発労働者の内部被ばく調査と、長崎、広島原爆被爆者の臓器に残る不溶性放射性物質の写真をもとに説明してくださいました。


飛散したセシウムボール   


さて、そのように体内に取り込んでしまうと非常に危険と思われるセシウムボールは、福島第一原発事故でどれほど排出され、どこまで飛散していったのでしょう?

セシウムボールを確認し、最初に報告されたのは茨城県つくば市にある気象研究所の足立幸次先生で、その研究によると、福島原発事故で放出された放射性セシウムの半分は不溶性の金属粒子の形で飛散し、範囲は福島県を中心に、関東地域全般や宮城県に及んでいることが示されました。


セシウムボール(通称・足立ボールとも)と呼ばれますが、後の研究で、そこにはプルトニウムやストロンチウムが混在していることも発見されています。


体内のセシウムボール   


このような放射性微粒子が空気中に漂っていたころ、鼻から吸い込めば鼻の粘膜に付着し細胞を壊すことを考えると、鼻血がでることも当然と思われます。

具体的な数値を見ると、長崎大学の高辻教授の計算では、プルトニウムのアルファ線の1本が細胞の核にあたると、24シーベルトに相当するということです。放医研の研究では、プルトニウムのアルファ線が細胞核にあたると、3分の2は細胞死すると仮定されています。
原発労働者の放射性ヨウ素(I-131)の体内残留量からみた甲状腺等価線量の研究では、最高で35.5シーベルトという値も計算されています。
ヨウ素もセシウムもベータ線を発するので、セシウムボールを体内に取り組むことの被ばくの危険性が想像できます。

また、ヨウ素は甲状腺に溜まることが知られていますが、セシウムは全身の筋肉に集まりやすいことも紹介されました。


最後に質疑応答で、今後気をつけることとして、被ばくによる免疫低下も紹介され、不溶性ではなくとも、放射性ヨウ素の甲状腺内での初期被ばくの激烈性などとともに、今後さらなる研究が必要とのことでした。

以上は特にセシウムボールについて、郷地先生のご講演を簡単にまとめたものですので、詳しくは動画をご覧下さい。


講演を終えて、私たちが今後、気をつけることは・・・

福島第一原発事故により環境中に大量に放出された放射性物質。その中でも大量に放出されたセシウムの半分が不溶性であったとの報告は衝撃的でした。なぜならば、そのセシウムボールは、飛散し、降下し、多くが土に沈着したと考えられるからです。除染によって集められた土壌にも多くのセシウムボールが含まれているでしょう。

現在、福島県内では中間貯蔵施設への搬入が本格化していると聞きますが、その運搬時に放射性汚染土から土埃となってセシウムボールが飛散している可能性はないでしょうか?

また、福島県外でも除染後の土壌が保育園や学校などの生活圏の敷地に埋められたままで、その管理はずさんになっていないでしょうか?


環境省は、8000ベクレル/kg以下の放射性廃棄物を一般ゴミとして扱う方針を出していますが、ほんとうにそれでいいのでしょうか?

また、福島県内の除染ででた8000ベクレル/kg以下の汚染土壌を全国の公共事業で使うとの案、福島県外の除染ででた汚染土壌は何万ベクレルであろうとそのまま埋め立て処分でかまわないとの案を環境省は出していますが、それでいいのでしょうか?


私はさよなら原発神戸アクションの仲間たちと共に、この汚染土壌の問題と対策を考えるイベントを秋に企画しています。

また、この汚染土壌の現状の説明と対策について私の提案を紹介するお話し会も、要望があれば行っていこうと思っています。

「ここまでわかった内部ひばく」・・・私たちは健康と未来を守るために、動かなければならいと確信させてもらった郷地秀夫先生の講演会でした。




= 関連ブログ =
小橋かおるブログ Words for Peace
■放射性汚染土・廃棄物を拡散しないために
http://flowersandbombs.blogspot.com/2019/01/
■放射能汚染防止法の制定に向けて
http://flowersandbombs.blogspot.com/2019/05/
■被爆者医療から見た原発事故(第1回のセミナーのまとめ)
Words for Peace 2013年5月
https://flowersandbombs.blogspot.com/2013/05/


 横浜市の保育園でふたりの園児が白血病を発症し、
その園庭に除染後の汚染土壌が埋められている問題をご存じでしょうか?
その汚染土壌の撤去の要請を拒否した横浜市についてブログにまとめました。
■7世代に思いをはせて【第556号】横浜からの続報
https://nanasedai.blogspot.com/2019/06/556.html


小橋かおる・お話し会のお知らせ
☆「7世代に思いをはせて
  〜放射能汚染から子供たちを守るために〜」
ゲスト:小橋かおるさん
日時:2019年6月29日(土)14:00〜16:00(13:30開場)
会場:神戸YWCA会館5Fチャペル
http://www.kobe.ywca.or.jp/top/access
参加費: 500円 お子さま連れ歓迎
~この地球は先祖からの贈りもの、そして子孫からの大切な預かりもの。複雑怪奇な世の中ですが、いつも「7世代に思いをはせて」何をすべきなのかを考えて動いてきました。
最初はいつもひとりで動き始めますが、一緒に動いてくれる方たちに巡り会い、戦禍に苦しむアフガニスタンやイラクの子どもたちの支援、福島第一原発事故の影響から子どもたちの健康を守るための活動を続けています。そしてこれから、放射性汚染土の拡散を止めるために動こうと思っています。
子孫からの大事な預かりものの大地を守るために、
少しお耳を傾けていただけませんか?~
主催:神戸YWCA平和活動部
詳細:http://www.kobe.ywca.or.jp/top/activities/forpeace/session/



司会進行・小橋かおる



満員の会場



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